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◇参る*拓哉

「なあ、織田」 「ん?」  幾つか色んな店を見ながら、何をお揃いにしようか迷っていたのだけれど。  ふと、思いついた。 「タイピンはどう?」 「タイピン?」 「毎日つけてるし、お互い良く見えるし。完全に同じにしなくても、一緒に買ったって、思ってられれば良くないか?」  どうかなーと思いながら、そう聞いたら。  少し考えた織田は、ぱっと笑顔になった。 「すっごく良いかも! つけてるのがずっと見えるっていうのが、めちゃくちゃ嬉しい」 「――――……ん。じゃあそうしよ」 「うん! 高瀬、さすが、名案」  なんかあまりに素直に嬉しそうに笑われると。  一瞬、返答に困る。 ……可愛すぎるよな……。  ブランド物のスーツを各種置いてある店があって、そこに行ってみたら、タイピンも種類がたくさんあった。  中から、同じブランドで似たような形の物とか、模様が少しちがう物をとりあえず3種類ずつ。お互いへのプレゼントにした。  「月曜からつけようね」  織田は小さな紙袋を持って、めちゃくちゃウキウキした顔で、隣を歩いてる。 「誰にもバレないし、でも自分たちお揃いって分かってるし。なんか嬉しい」 「そうだな」  笑顔、ほんと。可愛い。  でっかい瞳が、キラキラしてるし。 「他に行きたいとこある?」 「んー。オレはもう良いかなあ。高瀬は?」 「オレももういいや。じゃあ、夕飯買って帰ろうか」 「うん。今日は帰って飲もう~」 「ん」 「何食べようね?」  「そーだなあ……織田は何食べたい?」 「んー。なんか美味しいサラダが食べたいなー」 「いいね。あとは、焼き鳥?」 「うん、焼き鳥食べたい」 「焼き鳥はいつもだな」 「うん、大好き」  うまそうに食べるもんな。  いつもの織田を浮かべると、クスクス笑ってしまう。 「高瀬はおつまみだと何が良いの? いつもオレの好きなものになってる気がするんだけど」 「んー……織田の焼き鳥みたいに、絶対これってのはないんだよな……ああ、でも今日はなんか、刺身が食べたいかも」 「じゃあお刺身も買っていこ」  総菜や食料品を売っている所に向かいながら、話していると、織田が「あ」と声を出した。ポケットでスマホが震え出したらしく、画面を見て、オレを見上げた。 「俊兄だ。ちょっと待ってね?」 「ん」 「もしもーし、俊兄? うち着いた? ん。うん。……うん」  楽しそうに話していたのだけれど、最後の方、ちょっと首を傾げていて。  通話が終わってから、どうした?と聞くと。 「んー……? なんか、後で家着いたら、電話してだって。静かなとこで話したいからって」 「ふうん?」 「あ、高瀬に、ほんとにありがとうって言ってたよ。2人が、圭ちゃんと拓ちゃんと遊ぶって、ずっと言ってるらしいよ」 「そうなんだ。可愛いな?」 「うん」  ――――……圭ちゃんと、拓ちゃん、て今は、普通に言ったな。 「織田」 「うん?」 「オレの事、名前で呼ぶ?」 「え」  びっくりした顔でオレを見上げて――――……思った通り、赤くなる。 「……な、んで急に?」 「今、 拓ちゃんて言うの聞いて、思っただけ」 「――――……後で考えて、良い?」 「……いいよ」  ……可愛い。真っ赤。   「……高瀬は、呼べるの? オレのこと」 「呼べるけど」 「あ! 待ってっ」 「え?」 「……っ今呼ばれたら、死ぬからやめて」 「――――……」  ……死んじゃうのか。  クッと笑ってしまうと、むむ、と織田がオレを見上げて、ちょっと膨らんでる。 「早く買って、早く帰ろ?」  思う存分、触りたいから。  そんな風に思うのも。ほんとに織田が可愛いから。  ほんと、参る。

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