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◆番外編◆バレンタインデー🍫

 うちの会社は、去年からバレンタインデーの義理チョコは禁止になった。  女子社員も大変だし、返すのも大変だしって事でそうなって、誰もそれに特別異議はないみたいだった。  けど、本命ちょこは別。そこは社員の自由って事で。別に敢えてそう言われてはいないけど、「義理チョコ禁止」とわざわざ「義理」をつけた文面だったことで、社員達は皆、そこはちゃんと分かっている感じ。  で。高瀬。朝始業前も呼ばれてたし。今昼から帰ってくる間も、声を掛けられて。オレは、先に机に戻って来た。  けど。呼び出しから戻ってきても、持って帰ってはこないので、断ってはくれているらしい。  ちょっと嫌。なのはしょうがないよね。  高瀬はオレのなのにーって思っちゃうから。  オレが女の子だったら、思いっきり彼女って言いふらしてるのにー。  とか、アホな考えが浮かぶ。  ……いや、女の子でも、言いふらしてはないか。  アホだな。オレ。 「――――……」  オレから遅れること数分。席に帰ってきた高瀬が、オレを見て。  ちょっと困った顔をしてる。 「……おかえりー」 「……ん」  苦笑い。  別にオレ、気にしてないよ、というのも、なんかわざとらしいし。  ていうか、周りに先輩達も居るし。言えないけど。  気にしてないよと言いたいけど、全然気にしてない訳じゃない。  すごく可愛い子だったりして、そしたら高瀬が興味を引かれたら?とか。  やっぱり少しは、気になっちゃうし。  でも、高瀬はオレの事好きって、ずーっと言ってくれてるから、大丈夫だとは思うんだけど、でも、もしかしてめっちゃくちゃ可愛い子だったらー??  ……って、こんな心配は、もはやエンドレスな気がする。  だから、気にしないように、するしかない。  今日は、一緒にご飯食べに行こうねって、一緒に何かケーキでも買いに行こうねって、朝から話してた。  だから。気にしない。と思いたいんだけど、やっぱりすごく好きだから、気になってしまう。  ……でも、高瀬がモテるのは今に始まった事じゃないしなぁ。  ちょっと悶々としつつも、打ち合わせが入ったり、忙しくなったので、次第に何も考えてる暇もなくなって、あっという間に定時を迎えた。 「織田ー、今日打ち合わせ入ったから、あんま進んでないだろ? 残業する?」  太一先輩に言われて、はい、と頷く。確かに、本来やりたかった仕事が進んでない。 「オレも、1時間くらい残業して、今日は帰る」 「あ、デートですね?」 「うん。まあバレンタインデーにデートしなくても、別にオレは良いんだけどさー」 「良いじゃないですか、ちゃんとその日にデートしたいとか、彼女さん可愛いです」 「そう? でも一昨日も会ってたから、その日でも良くないかな?」 「そーいう事言ってると、嫌われますよ」 「彼女には言わないよ」  太一先輩が苦笑いで言う。 「そうですよね。あ、とりあえずオレは、めどがつくまで残りますね」 「ん、分かった」  太一先輩と話してから、パソコンに向き直ると、隣で渡先輩と高瀬も残業になったっぽい雰囲気。そのまま、1時間仕事をして、太一先輩は帰っていった。  それからしばらくして、渡先輩も帰っていき、お疲れさまーと言って気づくと、もう周り、大分居なくなっていた。 「あれっ。なんか皆今日早くない?」 「まあ渡先輩もデートらしいから」 「そっか」  ――――……オレ達は、ずっと一緒だから。別に帰んなくてもいいのかな。  うん。  そんな風に思っていたら、高瀬が、くすっと笑って。 「織田」 「……ん??」  高瀬が、机の引き出しから、ある箱を取り出してきて。 「なに??」 「あげる」  箱からキラキラした包装紙に包まれたものを取り出して。  少し開いて、包装紙に乗せたまま、オレの口に運んで食べさせてくれた。 「……ちょこれーと?」 「ん。バレンタイン。美味しい?」 「え。バレンタインなの??」 「ん」 「高瀬が買ったの?」 「うん、こないだ買っといた」 「え。オレのために??」  オレが思わずそう聞いたら。  高瀬は面白い顔をして。 「――――……他に誰のために買うの、オレ」  おかしそうにクスクス笑う。 「すっごい美味しいし……めちゃくちゃ、嬉しい」  言うと、高瀬もふ、と微笑んだ。 「織田、キリつきそう?」 「うん。30分位」 「じゃ、そしたら飯食いに行こう?」 「うん。――――……高瀬?」 「ん?」 「オレ、バレンタインは、用意してなかったんだけど」 「別に全然いーよ。ご飯食べて、デザート買おうって言ってたし。オレはこないだ、たまたまおいしそうだったから買っただけ」 「――――……じゃあホワイトデー用意しよっと」  オレがそう言うと、高瀬はクスッと笑って、オレをちょいちょい、と手招きした。 「ん?」  耳を寄せると。 「お礼にあとで、キスしてくれれば、良いよ」 「――――……っっっっ」  こそ、と囁かれて。  咄嗟に対処できるわけもなくて、真っ赤。 「……っっっ」  バレるから!!  オレが高瀬の事大好きって、絶対バレるからねっっ!!    高瀬をじっと見つめると。  くっ、と笑い出した高瀬は口元押さえて、声を殺して笑ってるし。  もう高瀬からめいっぱい顔を逸らしてパソコンに向かった。  ……ますます笑われたけど。  ――――……その後頑張って仕事を進ませて一緒に退社してたら、会社のビルを出る所で呼び止められて。  高瀬またかー、と思ったら、なんとオレ宛のチョコだった。  何とか断ったんだけど。   「こんな時間まで待ってるとか、結構本気だよな……」  と高瀬が呟いて。  ちょっとヤキモチ。妬いてくれたみたいで、えへへ、と、喜んでたら。  チョコに喜んでるんだと勘違いされたみたいで。  なんかその夜、めちゃくちゃ――――……。  好きって、言わされて。  なんか、すごく。高瀬が甘すぎて。   なんか、結構。大変だったけど。  そんな風に、ヤキモチ妬いてくれて、嬉しかったのは。  ……高瀬には、内緒。 (2022/3/14♡) ホワイトデーの日に ……バレンタインデー(*´ω`)

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