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◇ぶっとぶ*圭
高瀬の運転する車で、帰途に就いた。
「もう今日は1日雨なんだねー……」
「そうだな」
「車出してくれてありがとね」
「ん」
高瀬がする、いつもの優しい笑い方。
ああ。なんか、とにかくすごく好き。
ほくほくと、助手席から、変にならない位で見つめながら。
「高瀬が子供に優しくしてるとことかさ」
「ん?」
「会社の人達に見せたい」
「んー……? 何で?」
「ギャップにときめきそうだから。……あ。でも待って」
「ん?」
「だめだ、高瀬のファンが増えたら困るから、やっぱりオレだけでいいかも」
「……何それ」
クスクス笑われてしまう。
「高瀬が優しいの知ってるけど、それでも、あんなに子供と楽しそうにしてくれるって、結構びっくりしたから。高瀬をクールって思ってる人達は余計すごいギャップだよね、と思ったんだけどね……」
「ん」
高瀬はクス、と笑い返してくれる。
「ていうかさ、織田」
「うん?」
「周りがオレを見てどう思っても、オレには関係ないけど……」
「――――……」
「織田がオレを好きなら、それで良いし」
「――――……」
………………何なんだろうか、もう。
もうほんと。
……恥ずかしすぎる。
「織田、なんか、モテるとかよく気にする、よーな気がするけど」
「……」
「んな事言ったら、織田だってモテるだろうし……まあ、オレも少しはやだけど。でも、織田、周りの人にどんなに好かれても、関係ないだろ?」
「――――……うん。オレ、高瀬しか見てない、し」
オレのその答えに、高瀬は、ふ、と笑って。
「オレも同じ。――――……明後日から、お揃い、つけるんだし」
「――――……うん」
そうだ。お揃いだった。
嬉しいなーと、あっという間にご機嫌のオレは、窓の雨を眺めながら。
ふと、さっきの電話を思い出す。
1人になったら電話してって。
……俊兄、何かなあ? さっきお店だったから、うるさかっただけかもしれないけど。
「織田?」
「ん?」
「どした?」
「あー、うん。俊兄、何かなあって思って」
「ああ。あとで電話するってやつ?」
「うん。まあ。後ろがうるさいからって事だったかもしれないんだけどね」
「ん。じゃあ帰ったら電話する?」
「うん」
「じゃオレその間にシャワー浴びる。で、織田がシャワー浴びてる間に夕飯の用意するから」
「用意任せちゃってばかりな気がするんだけど……」
「いいよ」
クスクス笑って、高瀬が言う。
「……ありがと」
どーして高瀬は、こんなに優しいのかなー……。
もー。
大好きすぎるんですけど。
はー。ほんとに。
一生ずっと高瀬と、居たい。
なんて。超ウキウキしていたのだけど。
「え。俊兄、今なんて?」
家について、高瀬がお風呂、オレが電話をかけてすぐ。
そのウキウキがぶっ飛んだ。
『だからな? もしかして、圭は高瀬君と、付き合ってたり、する?』
「――――……」
ななななななななななな、なぜ?
普通に別れた俊兄から、そんな発言が飛んでくるの?
「ちょっと待って、俊兄」
オレは、バスルームの方に歩いて、ドアを開けた。
高瀬はちょうど上を脱いでて。ん?と振り返る。こんな時なのに。その裸にどき、としながら。
「どした?」
こそ、と囁く高瀬。オレは、音量を最大にして、高瀬と近づく。
「ごめん、俊兄、もっ回言って? 良く聞こえなくて」
『だからさ。圭は高瀬くんと、付き合ってたりするのかって、聞いてるんだけど……。聞こえた?』
その言葉に。高瀬とオレは、至近距離で顔を見合わせた。
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