『圭、聞いてる？』 「あ、うん。……聞こえたけど……どうして？」 　どうして、急に、そんな質問？？ 　そう聞くと。 『麻理にさ、今日の事とか話してんだけどさ――――……圭が、結婚がとか子供がとかそういうのが変わったみたいとか色々話してたんだけど……そしたら麻理がさ。冗談で言ったんだよ。もしかして、圭ちゃん、高瀬くんて子と付き合ってるから、価値観変わったんじゃないのー？て』 　……麻理さん。……鋭すぎる。見てもないのに。 『そん時は、はははーとか言って、笑って終わってな。だから麻理は、冗談だと思ってんだけど』 「……うん」 『ただなんか、その後、考えれば考えるほど、なんかほんとにそうなんじゃないかと思ってきて』 「……うん」 『――――……気になってしょうがねえし、圭に聞いてみようかなと思って』 「……そう、なんだ」 　――――……何て答えれば……。 　間近の高瀬と、じっと見つめ合ってしまう。 「――――……」 　高瀬はなんだか、にっこり笑って。 　任せる、と、小さく言う。 『圭？』 「あ、うん。聞こえてる」 　任せる。て言われても。 　――――……どうしよう。なんか。いつかとは思っていたけど、心の準備が……。 　そう思っていたら。 『あのさ、圭。――――……もしそうでも、オレ、反対はしねえから』 「――――……」 　その言葉に、何となく、唇を噛む。 『違ったら、アホみたいな質問なんだけどな』 　クスクス笑う俊兄。 「……あの――――……俊兄」 『うん？』 「……あのね。俊兄」 『ん』 「……いつか話そうと思ってたんだけど」 『うん』 　高瀬はまっすぐオレを見てて。 　オレも高瀬を見つめたまま。 「……つき、あってる。高瀬と」 『――――……』 「……まだ付き合ったばかり、なんだけど――――……入社式からずっと好きで……やっと、付き合えたとこ……」 　なんか、緊張しすぎて、耳鳴りがするような気がして、俯いたその時。 　そっと、高瀬の手が、オレの頭に触れた。 　撫でられて、顔を見ると、ふ、と優しく笑まれて。 　なんだか、自然と和んだ時――――……。 『ん、分かった。そっか。……うん、良かったな？』 「――――……」 　けろっとした感じで言う俊兄の言葉に、目をぱちくりさせてしまう。 『何？　お前、ずっと片思いだったの？』 「――――……」 『圭？』 「あ。　……うん。　あの――――……え。　良かった、の？」 『……ずっと好きで、叶ったとこなんだろ？』 「……あ、うん。オレは、良かったけど」 『じゃあ、良かったな？』 「――――……うん……」 　ただただ、笑んでる高瀬と見つめ合ったまま、俊兄の言葉に頷いていると。 『今度さ、三人で飯食おうぜ。高瀬くんにも言っといて』 「――――……うん」 『今日ずっと居たのに、全然気づかなくて悪い』 「………ううん、そんな」 　ぷるぷる首を振っていた時。 「織田、貸して？」 　小さな声でなくて普通の声でそう言って、高瀬がオレの手からスマホを受け取った。