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◇好きすぎ*圭
「ね、高瀬」
「ん」
「そういえばなんだけどさ? オレって、ここに越してくるのでいいの?」
「ん? 何?」
「2人で他のマンション借りるとか、そういうのじゃなくて、ここに来るのでいいの?」
「あー……うん。織田が嫌じゃなければ」
「嫌とかじゃないんだけど……ごめん、今更すぎなんだけど、家賃、いくらなの?」
今更なんだけど、すごくここ、高そうなんだよね。部屋多いし。広いし。
なんか、高そう。半分でいくらだろう??
ていうか、オレ、聞くの、今更すぎ。
「織田、新しいとこ、二人で借りたいって思う?」
「ううん。別に。さすがにオレんちは狭いから二人では無理だけど」
「ここでも、良い?」
「高瀬がここが良いなら、全然良いよ?」
「家賃なんだけど……」
「うん」
「――――……ここね、二十歳になった時に祖父が買ってくれたんだよ」
「……ん?」
「生前贈与ってやつ。だから、家賃は無いよ」
「――――……なるほど……?」
言いながら、全然なるほどって、なってないけど。
「祖父がいくつも会社やってる人でさ……まあ別にそれはオレには関係ないんだけど……なんか、住むとこには困らないだろって言ってくれて。オレ、初孫だからか、すげー甘いんだよね……。とにかく、だから家賃は要らないよ」
「――――……そうなの? え、いいの?」
「うん。織田が良ければ全然。ていうか、良いも何も、オレが家賃払ってないから」
「そうなんだー……」
としか、出ない。
「うち普通の家だから、そういう贈与とか、よく分かんない」
「まあ、うちも祖父んちがデカいだけで、普通の家だからその気持ちは分かる」
「そうなんだ……」
ん??とふと思う。
「高瀬、家とか会社を継ぐ、とか……無いの? 大丈夫?」
「――――……」
しばらく、じーっと見つめられて。
それから、ぷ、と笑われてしまった。
すぐに高瀬の手がオレの頬に掛かって、引き寄せられて、またキスされて。
「……大丈夫。そういうの継ぐとかまず考えるなら親父で、オレじゃないし。その後の事とかずっと先過ぎて、関係ないし。たとえ今継ぐとかなったとしても、織田と居るのが無理なら継がないし」
「――――……」
はっきりと、色々考えた訳じゃないんだけど、何となく、会社持ってて、そのうち継いだりするのかな、その時、男同士とかいいのかなって、僅かだけど浮かんだ心配。それをものすごくはっきり言って、否定してくれて。
なんかすごいなーと、ぼーと、見上げてると。
高瀬が、くす、と笑う。
「……って心配したんだろ? 違った?」
「――――……違くない。すごくぼんやりだけど、そういうこと考えて、大丈夫?って言ったかも……」
「だよな」
クスクス笑いながら、高瀬がオレの頭を撫でる。
「大丈夫、オレ、どんな事より、織田と居ること優先だから。そう思ってていいよ」
「――――……」
……何でこんなに。
欲しい言葉を、ほいほいとくれるんだろうか。
うーん……好きすぎる……。
ついつい、むぎゅ、と抱き付いてしまう。
……オレ達って、こうやってる時間がちょこちょこあって、全然食事がすすまないなー、なんて、笑ってしまいそうになりながら。
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