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◇ときめかせて*圭
たくさんたくさん、ベッドでゆっくりした後、やっと起きて、朝ごはん、一緒に作る事になった。
「オレ、卵焼くから、パン焼いてくれる?」
「うん」
「これ、バターね」
高瀬が卵を出すついでにバターをカウンターに置いてくれる。
食パンをトースターにセットして、蓋を閉めると、高瀬が一番最初にセットしてたコーヒーメーカーがピピと音を立てた。マグカップに注いでると、またカウンターに牛乳が置かれた。
「ありがと」
「ん」
クスっと笑いながら頷いて、フライパンで良い匂いをさせてる高瀬。
オレのコーヒーにだけ牛乳を入れて、冷蔵庫に戻す。
パンがちょうど焼けたから、バターを塗っていると、皿の端にレタスとミニトマトが乗っかってきて、その横に卵とベーコンが置かれた。
フライパンを戻してから、高瀬がコーヒーと箸をテーブルに運ぶと、戻ってきて、オレがバターを塗ってるのを見守ってる。
「……高瀬ってさ」
「ん」
「仕事もそうだけど――――……なんか、流れるように色々やるよね」
「……流れる?」
「そう。なんかこう……あれやりながら、これ、とか」
「そうだった?」
「卵出しながら、バターくれて、オレがコーヒー淹れてたら、牛乳出してくれて、なんかあれこれ、無駄がないというか……しかも、牛乳はオレしか入れないしさ」
「だって織田いつも入れるから」
「だからね、そういうのを、さらさらーーっと」
「うーん……そう?」
「そう。仕事もそうだよ、いつも、早い」
「んー……ほめてんの?」
くす、と笑われて見つめられて。
「めちゃくちゃカッコいいって、褒めてる」
笑いながら言うと、高瀬も、ふ、と目を細めて。
「……ありがと」
言ってすぐに、少し背をかがめて。
ちゅ、とキスされた。
ゆっくり離されるけど。
なんかあまりにカッコよくキスされるものだから、ぼー、と固まってると。
「織田、パン……」
塗り途中だったの、忘れてたオレは、クスクス笑われて、はっと気づく。
ていうか。
……超イケメンしかできないキスだよな。
ちょっと屈まれて、キスされちゃうとか、
しかも、なんかちょっと、ていうか、すごいカッコよく笑いながら、見つめながら、あっという間に近づいてて、でもって、優しくキスしてきちゃうとか、もうほんとに――――……。
なんかいっぱい色々狼狽えて考えながら、ぬりぬりしてると。
「んー……ぬりすぎ……?」
また高瀬が笑う。
はっ。……確かに。
固まったオレに笑いながら、高瀬はバターを冷蔵庫に片づけて、皿を二つ持って、テーブルに運ぶ。
「織田、麦茶飲む?」
「うん」
「冷蔵庫に作ったから、出して」
「あ、うん」
冷蔵庫の右ポケットの所から、麦茶を出しながら。
「あれ? 麦茶って、前から作ってたっけ……?」
「織田が飲むだろ? 自分の家だと作ってるって言ってたし」
「うん。オレは飲む……作ってくれたの? 入れ物は?」
「買ったけど……作ったらオレも飲むし」
何でもないことのように、ん?と見つめてくるけれど。
――――……そういうとこだよ。
……カッコいいというか。優しいというか。
大好きっていうか。
……もう、なんか。
オレをこれ以上ときめかせてどーしてくれるんだ。もう。
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