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◇九十九パーセント*圭

 高瀬と一緒に、オレのマンションに来た。 「そんなに荷物ないと思ってたんだけど……引っ越すってなると、やっぱりそれなりにたくさんだね」 「まあ、そうだよな……」  二人で、色んな部屋見回しながら、要る家具と捨てる家具を考える。 「収納は結構あるから、服は入ると思うけど……」 「大きいのは、なるべく処分するね。……でも家具はそんなに無いかな。備え付けだから」 「な、ベッドなんだけどさ。どうせ寝ないから、折りたたみの簡易ベッドみたいなのを買う? 誰か来るとき広げれば」 「あ、そうだね。そうする。じゃあベッドも処分だね」 「まとめて色々買取とかしてくれるとこが無いか、後で探してみよ」 「うん」  頷いてから、ふー、と息をつく。  引っ越しかぁ。  ――――……今年の三月に入社前に一人暮らしを始めた時は、考えもしなかったなあ。男を好きになって、一緒に暮らすためにこの部屋を出るとか。 「高瀬ー」 「ん?」 「一緒に暮らすようになってさ」 「ん」 「なんかオレのやなとこあったら、ちゃんと言ってね」 「――――……」 「良く言うじゃん、一緒に暮らし始めたら、何か違うとかさ」  まっすぐ高瀬を見つめながら言うと、高瀬は、何も言わずにオレをじっと見つめてる。 「なるべく、直すようにするから」 「――――……じゃあ、オレもそーして」 「……うん。分かった」  ……分かった、とは言ったけど。  ――――……高瀬に嫌なとこ?? うーん。……高瀬に嫌なとこ……。  考えながら、じっと高瀬を見つめてしまう。 「何?」  クスクス笑われて。あは、と笑ってしまう。 「高瀬に嫌なとこなんて、無いかなーって思って」  言うと、高瀬は、ふ、と笑って。  「織田おいで」と言われて腕を引かれて、すぽ、と抱き締められた。 「……オレも、そう思ったけど」  クスクス笑う高瀬の唇が、髪の毛にキスしてる感覚。 「まあ、何かあったら、て話だろ?」 「うん、オレにあったら言ってね。嫌いになる前に」 「……バカだなー、織田。嫌いになるって思ってる?」 「いや。なんか……すっごい嫌なとこがあって、続いたら……」 「あるの? すっごい嫌なとこ」  高瀬は可笑しそうに笑いながら、オレの顔に触れて、上向かせて見つめてくる。吸い込まれそうな、綺麗な瞳を受けとめて、ちょっと言葉に詰まる。 「――――……」  ほんとオレは。  入社式に一目惚れした時のままの気持ちで。  びっくりする位、好きなままだなあ。 「分かんない。……あったら、言って?」 「……分かったけど――――……」 「……けど?」  けど、何だろ?  高瀬の言葉を待っていると。 「プログラムだと、どっか違うと駄目だけどさ」 「……?」 「九十九パーセント好きなら、一パーセント嫌いでも、そんなのどうにでもなるだろ」 「――――……」 「だから、絶対平気」 「――――……」  そんな風に言って、またすっぽり抱きしめられてしまうけど。  ……九十九パーセント、好きって。  今言ってくれたってこと、だよね。  ……嬉しすぎるんですけど……。  当の高瀬は、それを言ったことには、気づいてないのではないかなと思うと、余計に嬉しくなる。無意識にそんなこと言ってくれるとか。 「……高瀬」 「ん?」 「……オレ、高瀬、めちゃくちゃ、好き」 「――――……」  腕の中から見上げて、多分超笑顔で言ったと思う。  するときょとんとしてオレを見て、それから、ふ、と笑う。 「こっちのセリフだけど」  そう言って、ゆっくりゆっくり、キスしてくれた。

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