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◇勝てない*圭
色々片付けて、スーツとかは、全部、高瀬の車に乗せた。
今日の所はこれで終わりにして、あとは早く帰れる日と、来週末に続きをする事にした。
そのまま少し車を走らせてくれて、ショッピングモールにやって来て、二人で日用品の店に入って、端から見ていく。
「高瀬んちってタオルとか揃ってるよね」
「ああ」
「なんかポリシーがある?」
聞くと、高瀬がクスクス笑う。
「ポリシーっていうか……気に入ったのを同じの買ってるだけかな」
「うん、あれ、肌触りいいから分かる」
「そっか。良かった」
「なんかさー、高瀬の部屋って、部屋だけでもカッコいいよね」
「……そう?」
高瀬は、また可笑しそうに笑って、オレを見つめる。
「うん、そう」
見つめ返して、ついつい微笑んでしまう。
かっこよすぎる。
――――……全部。
家で見てもカッコいいけど、外で見てても、なんか、靴をはいて立ってるだけで、どうしてこんなにカッコいいんだろうか。
オレこの人と、ほんとに付き合ってて、一緒に暮らそうとか、家族に言おうとか、そんなこと、言ってるんだよね。
はー、不思議。
ほんと不思議。
オレが高瀬を好きなのは、当然みたいな気がするけど。
高瀬がオレを好きなのは、奇跡みたいな気がする。
もう、これからの人生の奇跡、ここで全部使い切ってたとしても文句は無いよ、うんうん。
そんなことを考えながら、雑貨や色々、見ていくけれど、大体のものは高瀬のへやで綺麗にそろってる気がするので、新しく買うものは見当たらない。
何となく色々ウロウロしてる内にちょっとだけ、高瀬と離れたら。
高瀬の後ろにいる女の子達が、高瀬を見て、おそらく、イケメンとか、そんな類のことを言って、きゃいきゃい笑っている。
……もはや、見慣れたこの光景。
町歩いてても目を引くイケメンとか、女の子が振り返るとか。
漫画とか、ドラマ位かと。あとはほら、俳優さんとかさ。そういう世界だけのことじゃないかと思ってたけど。
……高瀬は、ほんと目立つもんなー。
皆、後ろ姿だけを見ても、何かしら惹かれるみたいで、わざわざ前に確認に行く子も見た事あるもんなぁ。うーん、すごい。
もはやオレは、雑貨を見ているというよりは、高瀬がモテてるのを、すごいなーと、確認していたのだけれど。
オレに気付いた高瀬が、ふ、と笑んで、手招きをした。
呼ばれたオレが近づくと、すぐ後ろにいた女の子達は少し離れて行った。
「なんか良いのあった?」
「ううん。高瀬の家、色々揃ってるし」
「じゃあ食器のお店にいこっか。マグカップとかも、揃える?」
「うん! うんうん、そうしよそうしよ」
「あとはあれだな、折りたためる簡易ベッドみたいなの」
「うんうん」
高瀬の言う言葉にうんうん頷いていると。
高瀬がオレを見つめて、ふ、と笑った。
「……? なに?」
「――――……使わないけどね、そのベッド」
「――――……」
「オレと寝るから」
クスクス笑いながら、耳元で囁かれて。
――――……っっ絶対真っ赤になった、オレ。
余計楽しそうに笑うけど。
もー。高瀬……。
そういうの、外でやるのやめて。
高瀬を見てる女の子達に、見られるー。
ジト目で見てると、クスクス笑う高瀬に、ポンポンと背中を叩かれ、あっちの店いこ、と誘われた。
「あー、かわい」
クスクス笑う高瀬。
ダメだ。勝てない。
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