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◇ポカ*圭
週末を、高瀬の部屋で過ごして。
月曜日。
お揃いだけど、お揃いに見えないタイピンをして、ご機嫌で、出社したのだけれど。
朝のミーティングがあって、その日、高瀬は午後から取引先に行くことになってしまって、ちょっとがっかり。
……なってしまった、って、仕事だからしょうがないんだけど。
夕方まで帰ってこれないみたいで、渡先輩と高瀬は、家に直帰することに決まった。
「織田とオレ、どっちが帰り早いかな」
「どうだろうね」
隣の席に戻った時、高瀬がこそ、と囁いてきたので、首を傾げる。
「オレ今日は急ぎのものないけど……」
「じゃあ織田の方が早いかもな。夕飯、どうする?」
「んー……オレ今日は、自分ち帰ろうかな?」
そう言うと、高瀬はちょっと眉を顰めつつも。
「……んーなんか今日行くとこさ」
「うん」
「飲みに付き合わされそうなんだよ」
「あ、そうなの?」
「向こうの人が好きなんだって、渡先輩が言っててさ。オレ、何時か分かんないから、織田が楽な方でいいよ」
「じゃあ今日は帰って、ちょっと荷物とか、整理しとくよ」
「……まあ、寂しいけど、しょうがないか……」
……寂しいけど。だって。
高瀬。
うー、なんか、すごい嬉しいんだけど、どうしよう。
そんなさりげなく、寂しいとか言ってくれちゃうとか。
……大好きすぎる。
一人静かに、じーんと悶えていると。
先輩たちが戻ってきてしまったので、仕方なく仕事に戻った。
戻りはしたけど。
高瀬、オレが自分ち帰っちゃうの寂しいんだ。
なんて思うと、とってもウキウキしてしまい。
仕事も楽しくてしょうがない。
◇ ◇ ◇ ◇
……なんて、幸せに午前中を過ごし。
高瀬と渡先輩を、送り出した午後。
ある電話で、オレの予定は一変した。
◇ ◇ ◇ ◇
「……そろそろ、ごはん食べようかなぁ……」
自分の周辺以外は明かりの消えた職場を見回して、それから時計に目をやると、二十二時過ぎ。
自分でも呆れる程のコトをやらかしてしまった。
入社して半年。仕事も大分慣れてきてた。ユーザーとの打ち合わせを行い、それによって納期までのスケジュール管理を行うのも、仕事の内。今まではそこまでの大きなミスもなく、うまくこなしていたのに。
完全に日付を勘違いして全く疑問にも思わず、余裕をかましていた所へ、問い合わせの電話が入った。
焦りながらも何とか話を付けて、来週までにある程度形にして持って行くことができれば、ペナルティにはならない事にしてもらえた。
手伝うというチームの先輩たちに、とりあえず今日明日、一人で出来る所まで頑張ってから、お願いします、と言った。
あくまでこれは、納期管理を任されていた自分の責任。一年目だからといって甘えるべきではないと、思ったから。
とりあえず一気に出来る所まではやり終えて。
残りはご飯を食べながらにしよう、なんて思って会社を一旦出た。
あ。高瀬、どうしたかなあ。
まだ連絡来ないってことは、飲んでるのかな。
大変……。
さすがに午後は精一杯で、スマホを見てる暇もなかったけど。
まだ連絡来てなくて良かった。
早くに連絡来てたら、心配させるとこだった。
なんて、ちょっとほっとする。
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