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◇お弁当タイム*圭
お弁当屋さんで色々買って、会社にダッシュで戻った。
エレベーターで息を整える。
ドアを開けて、こっちを振り返った高瀬のもとに急ぐ。
さっきまで一人だった部屋に、高瀬が居るだけで。
何でこんなにウキウキするんだろうなんて、すごく思う。
「高瀬、お疲れ! あの――――……ごめんね?」
そう言うと、高瀬は椅子に座ったまま、苦笑いを浮かべながらオレを見上げた。
「……織田、それは何に謝ってんの?」
「え。待たせて……あと、一緒に居てくれるっていうから……」
「別にオレはオレのすることもあるし。……てか、違うだろ、さっき言ったろ」
「……高瀬に言わなくて、ごめん」
そう言ったら、高瀬は、ん、と笑顔。
「そ。……プライベートと仕事は別だけど、オレらは同期なんだしさ。先輩らに迷惑かけんのと、オレらが協力すんのとは違うだろ?」
「ん……ありがと、高瀬」
そう言うと、高瀬は頷いて、微笑む。
「でもとりあえず自分でやりたいんだろ?」
「うん」
「じゃあ、オレはこっちやるから」
「うん。……居てくれるだけで、嬉しい」
「――――……」
高瀬はオレを見上げて、ふ、と微笑む。
「……可愛いこと言うと、キスするけど」
「――――……」
焦ってぷるぷる首を振ってしまう。
「……そんな嫌?」
クスクス笑われて、そんな風に聞かれるけど。
「いやっていうか……なんか明日もここで、思い出しちゃいそうだから……」
困って言うと、高瀬はまた面白そうに笑う。
「なんかそれで困ってる織田を見るのもいいな。可愛い」
「……可愛くないですけど。ほんと使い物にならなくなって、困るよ?」
言いながら、クスクス笑ってる高瀬の隣に座る。
お弁当やさんのビニール袋から、色々取り出していく。
「はい、これおにぎりね。あと豚汁があったから。はい」
「豚汁? ありがと」
「うん。あと麦茶。はい」
「コーヒーあるのに」
「おにぎりとコーヒーって……微妙かなって。お茶の方がいいかなーと思って一応ね」
高瀬は受け取って、ありがと、と笑う。
「オレは唐揚げ弁当買ってきたの。唐揚げ増量してきたから高瀬も食べて?」
「唐揚げ好きだよな」
クスクス笑われて、うん、と頷く。
「唐揚げ大好き。いただきまーす」
食べ始めて、あ、と高瀬にも、お箸を渡す。
「食べていいよー」
お弁当を高瀬に差し出しながらそう言うと。高瀬は、箸はいいよと手を振ってから。
「口入れて」
そんなこと言って、高瀬が、あーんと口を開けてる。
「――――……」
しばし、目の前の、カッコいいけど、なんか可愛い高瀬を見つめる。
何これ。
餌付けしていいの? なんのご褒美だろ?
でもでも、めちゃくちゃ照れるー!!
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