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◇いまだに*圭

 あの後なんとか気合で、頭ぼーっとした状態からは、無理無理復活。  高瀬と並んで、それぞれパソコンに向かってる。  不思議なことに、さっきまで一人でやっていた時とやってることは変わらないのに、ものすごく気分がウキウキしてるせいなのか、めちゃくちゃはかどる。  やっぱり、仕事って、モチベーションとか、やる気とかがすごい関わるんだろうなあと、改めて実感しているところ。 「織田、順調?」  ちら、と振り返られて、うん、と笑顔で頷く。  そっか、と笑われて、そのまま、また仕事続行。  おだ、じゅんちょう?  たった八文字の言葉に、こんなに、元気づけられるって。  高瀬って、すごい。  鼻歌を歌いたいような気持ちで仕事を頑張れる気がするから、ほんと、すごい。  それから一時間ちょっと。  話はしなかったけれど時たま見つめあって、応援し合いつつ、すごく仕事頑張った。  とりあえず今日のところはこれでいいかなあ。  また明日頑張ればいける、という区切りの良い所でほっと息をついた瞬間、高瀬が振り返った。 「そろそろ帰れそう?」 「高瀬はもういいの?」 「ん、明日朝イチで送信できそうなとこまでは、終わった」 「そっか、お疲れ。オレも、また明日頑張ればいいかなって」 「織田もお疲れ。じゃあ帰う?」 「うん」  高瀬もオレもパソコンの電源を落とした。  んー、と背伸び。 「そういえば、これいつ分かったんだ?」 「高瀬が昼の後出て行って……一時間位経った頃かなあ。電話が来て分かった」 「じゃあそっから、ミーティングしたり忙しかった?」 「うん。そうだった」 「……怒られた?」 「んー、怒られたというよりは、さあどうするか、みたいな感じだった」 「そっか、なら良かったな」 「ん。ありがと」  そう言うと、高瀬は笑って首を振った。  持っていたボールペンをペン立てにしまい、ノートを引き出しに入れて鍵をかけると、立ち上がる。 「織田がいっつも一生懸命だからさ、先輩たちも優しいんだと思うけど。日頃の行いだよな」  クスクス笑いながら、高瀬はなんだかとっても嬉しいことを言ってくれる。 「そんな嬉しいこと言ってもらえると、調子に乗っちゃうよ」 「いいよ、乗っても」  オレも全部片づけ終えて、立ち上がった。  上着に袖を通しながら、ふと高瀬に目を向けるとタイピンに目が留まる。そのまま自分のも確認して、嬉しくなって微笑んだ。 「ひそかにお揃いなのって、嬉しいよね」 「ん? ああ、そうだな……」  不思議そうにオレを見て、オレの視線に気づくと、すぐに頷いた。 「四月に会った時は、お揃いで何かをつけるとか、思わなかったよな?」  楽しそうに笑って、高瀬がオレを見つめる。  そんな風に、特別なものを見るみたいな優しい瞳で見つめてもらえるとか思ってなかったっけ。高瀬は優しいけど、皆に優しいんだって、思ってたしなあ……。  高瀬に頷きながら、そんな風に思う。  大体にして、男とそういう風になるなんて。  オレは、高瀬に一目惚れで割とすぐ認めてたから、会ってからもう少しは願望として思ってはいたけど、叶うなんては思わなかったし。お揃いなんて、一緒に暮らそうなんて、ほんとにいまだに不思議だけど。 「早く帰ろ、織田」 「……うん」 「どうかした?」  オレの返事が遅かったからか、歩き出した高瀬がオレを振り返った。 「今から一緒に帰るっていうのがさ」 「ん?」 「すごい嬉しいなーって思って」  そう言うと、高瀬はオレを見つめて笑う。  

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