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◇便利?*拓哉

 寝る準備をして、織田と一緒に、ベッドに入る。 「電気消すよ?」 「うん」  織田はすっぽり布団に入って、オレを見上げて頷いている。リモコンで電気を消してから、その隣に横になって、織田の方を向いて横になった。  枕に頭を置いてる織田を、なんとなく腕の中に引き寄せて、ぽふ、と抱き込む感じ。 「……明日もちょっと忙しいなぁ……しょうがないけど」 「ん。何かあったら言って」 「うん。聞いちゃうかも」 「いいよ」  ちゅ、と額にキスして、そのままくっついたままで。 「今日のことで今週バタバタしてるなら、他の仕事回してくれてもいいよ」 「んー……明日確認してから。出来るなら頑張るし」 「ん。分かった」  よしよし、と頭、撫でていると、織田がクスクス笑う。 「……幸せすぎるんだけど。これ……」 「……まあ、それ、オレも」 「撫でられるのが幸せなんだよ?」 「……撫でてても、そうだよ」  オレが言うと、数秒黙った織田が、もぞもぞ動いて、手をオレの頭に伸ばしてくる。 「ちょっとやらせて?」 「いーけど……」  クスクス笑いながら、少し頭を織田の方に傾けると。  よしよしよし、みたいな感じで、優しい手つきで髪の毛をくしゃくしゃと撫でてくる。 「――――……あ、分かった……」 「ん?」 「撫でても、幸せなの、分かった」  ふ、と笑いながら、さっきの位置に戻ってきて、織田は、オレの胸にぎゅー、としがみついてきた。 「……高瀬は幸せだった? 撫でられて」 「ん」  今度は、織田の頭に、キスしながら頷くと。 「……何か、便利だね」 「便利?」 「こんな簡単なのに、こんな幸せになれるって……便利? ……とは違うか」 「――――……そう、だな。便利だな」  言いながら笑ってしまうと、「あ、高瀬笑ってるし」と織田も笑う。 「ただで、幸せになれちゃうって良いよね」  とまだ言ってる。 「ただで……そうだな」 「また笑ってるし……でもそう思うでしょ?」 「ん」  クスクス笑い合って、そのまま、何でかオレの胸元にしがみついてる織田を、ぎゅ、と包み込むみたいに抱き締めてみた。なんだか、外からのもの全部触れさせず、オレだけのものにしてるみたいで。  便利とか、ただとか。可笑しいなとも思うけど、でも、確かに。  織田の言う通り。  こんなただ、触れるだけで、こんなに幸せな気分になれるとか。  すごいなとも、思ってる。 「……こうやって織田とくっついてるのも、ほんと、幸せだと思ってるよ」 「うん。オレもそう思う。安心するよね」  嬉しそうに、笑いを含んだ声で織田が言う。 「……高瀬と居ると、ドキドキするし、緊張もするんだけどさ」 「――――……」 「でもすっごい、安心する」  しみじみ言ってる織田に、ふ、と笑んでしまう。  緊張とはちょっと違うけど、織田と居ると、なんだかずっと、気持ちが弾んでる感じがしてて。  隣に居ると、嬉しいし、ほっとする。  ……ほんと。  初めてだから、こんな感情は、くすぐったいって感じるオレも居るんだけど。

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