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◇両想い*拓哉
「高瀬のことクールっていってるけど、ここの皆とは結構がっつり仲良しなんだね」
しばらく話していて、不意に織田が言った言葉に、皆が沸いた。
「ゼミの仲間だから、一緒に考えたりすること多かったから」
「でも、最初、絶対仲良くなれないと思ってた」
「今だって、高瀬は高瀬って感じだよなー?」
「最初ただ怖かった」
「女子は最初から、超好意的だったよな」
あれやこれや好き勝手言ってるのを聞いて、織田はクスクス笑った。
「なんかちょっと、目に浮かぶような感じ……」
ふ、とオレを見上げて笑う織田。
「でもオレ、高瀬は最初からすごく優しいと思ってたけど」
「クールじゃなくて?」
「だって最初会った時の高瀬、すごい笑いすぎな感じで笑ってたもん」
「あー……あれは……」
入社式の書類が降ってきて……なんかすごいツボにはまって……。
思い出して、また、ぷ、と笑ってしまうと。
「また笑うー」
織田も、可笑しくてしょうがないって顔で、クスクス笑って、オレを見つめてくる。
「……なんか、あれだよね」
「高瀬、織田くんに、すげー優しいのな」
不意に言われて、織田が、え、とオレを見る。
「……うん、まあ。優しいけど。……ていうか、皆に優しいけど」
「高瀬って優しかったっけ?」
「冷めてたよなあ?」
「えーでも優しかったよ~」
「そうだよ~、さりげなく優しいの」
女子達が、ねー、と言って、ふふ、と笑うと、織田もそれにうんうん頷いてる。
「分かる、さりげなく優しいよね。入社式で、先に座ってる高瀬の上に、持ってた封筒の中身全部、ばらまいたの、オレ」
「え? なにそれ」
「そしたら拾って集めてくれて、助けてくれてさ。それから偶然新人研修も、配属先もずっと一緒で……」
あはは、と笑う織田に、皆が、「書類ぶちまけられてる高瀬とか面白すぎる」と言って大盛り上がり。何なんだ一体と思いながらも。
まあいっか……。
とにかく織田がめちゃくちゃ楽しそうにしてるから。
オレの学生時代の仲間と、織田が楽しそうにしてるとか。
正直言って、ものすごく不思議だけれど。
「織田くんて彼女は居る?」
「んー、彼女は居ないけど……」
「高瀬のことばっかり褒めてるけど、織田くんもモテそうだけど」
「うーん……? でもオレ、すごく好きな人居るから」
「そうなんだ」
「うん。そうなの」
「片思い? なの?」
「……んー……ううん。両想い、かな」
「わあ、いいねえ、今一番楽しい時じゃない?」
多分好き同士で付き合う前、だとでも思ったらしい皆が、わいわい盛り上がってあれこれ聞いているが。
ふふ、と笑って、詳しいことはボヤかしながら、ご機嫌でニコニコで、適度に答えてる。
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