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第223話◇その気…*圭

 もう……見つめられてるだけで赤面させられるって。  ……そんな相手、オレにとっては、高瀬以外、この世に居ないと思う。 「ほんと好き、織田」 「――――……」  むぎゅ、と抱き寄せられて、後頭部に手が触れて、よしよしされる。  ……つか、なんかもうオレ、さっきから、何も答えられてないんだけど。  なんでこんなに、優しいのとか、強烈なんだろうか。  職場の人たちとか、高瀬がこんなに優しいとか、絶対知らない。  甘々なのも。  クール、て思われてる。  ……スーツ姿が、カッコよすぎるから、余計かもだけど。  もう、すごい優越感、あるんだけど。こんな高瀬を知ってるの、オレだけだっていうの。幸せなんだけど。  でもなんだか、高瀬に言葉として、返せることは何も浮かばない。 「――――……」  まともにちゃんと返事もできなくて。  ……わーん、もっと、ちゃんと、返事したいんだけど。  無理。  大好きすぎて。胸がいっぱいすぎる。  すごく、手に力を込めて動かして。  ……高瀬の腰までやっとたどり着く。 「……うー……」 「?」  なんか、もう何も考えられなくなってて。ついつい唸ってると、高瀬は、オレを抱き締めてた腕をゆるめて覗き込んできた。 「織田??」  すごく不思議そうな顔で、オレと視線を合わせる。  腰に回してた手に力を込めて、ぎゅ、と抱きついて、顔を埋める。 「織田?」 「……好き。高瀬」  やっと、そう答えたら。  少し黙った高瀬が、はは、と笑って。 「ヤバいなー……ほんと、可愛いな」  そんな風に、囁かれた。耳元で響く声に、ぞく、としてしまう。  だめだーもう無理だー。  世界で一番カッコよいと思ってる人に、可愛いとか囁かれるとか、見つめられちゃうとか、ほんとマジで無理ー。  一番最初からドキドキで、ずっと心臓ヤバいってオレ言ってた気がするのだけど、なんかもう大好きが前よりどんどん増してきて。慣れるどころか、なんかますます無理になってきてる気がする。  ううぅ……。 「たか、せ」 「ん……?」 「……あの」 「うん?」  くす、と笑う高瀬が、オレを覗き込んでくる。 「――――……あの……」 「どした?」  あくまで優しい。  もう、胸がキュンキュンしすぎて、溶ける……。 「……べ……」 「べ?」 「あの」 「うん」  返事を返してくれながら、ついに高瀬が、クッと笑い始めてしまった。 「~~~っ」  自分が悪いのだけれど、笑われると言えなくなるーとむむむ、と口を閉じたら、高瀬はさらに可笑しそうに笑いながら。 「ごめん、なんか……可愛くて。何? 何が言いたい?」  楽しそうに緩む、優しい瞳が好きだー!と。  海に向かって叫びたい気分になりながらも、オレは。 「……ベッド……行きたい」  高瀬と。  ……こんな中途半端じゃなくて。  …………密着、したい。とか。  そこまでは言えなかったけど。  それを聞いた高瀬は、笑いを止めて。  ぎゅ、と抱き締められた。 「あーもー……無理。可愛くて」  言いながら、高瀬が、ちゅ、と頬にキスしてきて。ぺろ、と舐めてきた。  ひえ!とビクついたオレを、また、ぎゅ、と抱き締めて。 「……一瞬でその気になったかも」 「?」  その気?   ……その言葉の意味は、密着させられた下半身に。  服越しでも感じると。 「…………っ」  かああああ……と、嘘みたいに一気に、熱が顔に集まった。 「ベッド、行こ」 「……っっ」  自分で誘ったのだけれど、うわわ、無理かも、とおじけづく。  嫌なんじゃなくて。……好きすぎて。

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