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◇いつもよりも。

 翌朝。  朝ごはんを終えて、一緒に洗いものを済ませた。  窓から外を見ると、すごくいい天気。 「な、高瀬、どこか出かける?」 「ん、いいよ。どこ行きたい?」 「ぶらぶら―と歩きたい。いい天気だし」 「駅の方行く?」 「あ、服も、ちょっと見たい」 「いいよ」  快く頷いてくれて、すぐ出発することになった。  割と広い歩道で、高瀬と並んで歩き始める。  空は青い。白い雲、綺麗。  何だか、空気も冴えてて綺麗な気がする。  スーツ姿をみることの方が多いから、私服はいっつもカッコよくてキラキラして見える。さすがにちょっと気持ち悪いので、その言い方はできないけど。  なんか眩しく見えてしまう。すごいよな、高瀬。オレちょっとは、見慣れてきてる筈なのに。 「高瀬と居るとさ、なんかすっごいウキウキする」 「そう?」 「うん、そう!」  笑顔で頷くと、クスクス笑う高瀬。 「でも、それはオレもだから」 「ほんと?」  ついつい聞いてしまったら、高瀬は、ほんとだよ、と笑う。 「あんまりオレ、ウキウキしては見えない?」 「んー。見えないかなあ。ていうか、高瀬に、ウキウキっていう言葉が似合わなくて、今びっくりした」 「まあ分かる……自分でも思う」  二人で顔を見合わせて、クスクス笑ってしまう。 「オレは? ウキウキして見える?」  じっと高瀬を見つめると、高瀬は可笑しそうに笑って頷く。 「織田は結構いつでもウキウキして見えるけど」 「そう?」 「うん。いつも楽しそうだよ。周りの人もそう思ってると思う」 「んーそうかな。……あ、でもオレ的にはさ、高瀬と居る時は、普段とは全然違うんだよ」  そう言うと、高瀬は、そうなの? と笑って、オレを斜めに見つめてくる。  んー、流し目が。カッコよすぎると、感動しながら。 「何だろ。楽しいっていうのプラスで、ドキドキもしてるから。なんか……余計ウキウキしてる」 「……そっか」  頷いて、クスクス笑う。 「あ、でもそっか。高瀬は、高瀬と居るオレしか見てないから……だからいっつものオレが、いつもだと思ってるんだよね」 「オレが居ないと、いつもの織田じゃない?」 「うーん、同じといったら同じかもだけど……でも、なんかこう……ドキドキしてすっごく楽しいのが、もうちょっと少ないかも……? 分かる?」 「分かるよ」 「あ、分かる?」  分かってくれる? と高瀬を見つめると。 「オレも織田が居ると、楽しいって思うから――――……織田が居ない時のオレより、少しは楽しそうに見えてるかも、と思う」 「オレが居ない時の高瀬はどんななの?」 「んー……オレ基本的に、あんまり興味無さそうで冷めてそう、みたいに言われてたし、まあ、それ言われても、別にそう思われててもいいやと、確かに冷めてる部分もあった。昨日のあいつらだって、会った頃は怖かったとか、なんか好き放題言われるしな」 「クールって感じだね」 「……良い方にとるよな、織田って」  高瀬はそう言って、クスクス笑う。 「無関心とか興味なし、とか、カッコつけてるとか、そっちだったと思うけど」 「カッコつけてるって……もともとカッコいいから、カッコつけてないよね。やっかみだな、きっと。高瀬がカッコよすぎるから」  言いながら絶対そうだろうなー、と思って、ウンウン頷いていると、高瀬は、ぷ、と笑った。 「ほんと、どこまで良い方にとってくれんのかな」 「良い方に取るとかじゃなくて、絶対そうだと思うし」 「そう?」  高瀬はクスクス笑いながら、オレを見つめる。 「織田と居るようになって、笑うことが増えたのは絶対だな」  とか。  高瀬が、めちゃくちゃ嬉しいことを、ぽそ、と言ってくれる。 「ほんとに?」 「ん? ほんとだよ」 「それって、すごく嬉しいかも」  オレはもうとにかく、すっごく、ご機嫌。  高瀬って、オレを嬉しくさせるの、ほんと上手だと思う。  

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