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◇デジャヴュ

 駅ビルについて、男物の服の店が並んでる階を一緒に歩く。  高瀬が少し止まった店を、オレも覗いて顔を見上げた。 「ここ寄る?」 「ん」  高瀬が笑うので、一緒に入ると、高瀬は迷わず、白のセーターを手にとった。  白って珍しいかも。高瀬は、黒っぽい色が多い。それか、寒色系。クールなイメージにぴったりで超カッコいい。あ、あ、でも、白もたまに着てたかも。いいなあ。何着てもカッコイイから、全部似合うなとか考えていると。  高瀬がその白い服を、オレに合わせた。 「え? オレ?」 「これ似合いそうだと思って」  え、オレに似合いそうって思って、ここに寄ることにしたの?  そう思うと、何だかとっても嬉しい。 「似合う??」 「うん。似合う。どう?」  高瀬が合わせてくれるまま、鏡に映った自分を見る。  うん、悪くない、かなあ。  高瀬がオレに似合うって選んでくれるっていうのが、嬉しくて、ふ、と笑うと。高瀬は、オレが気に入ったんだと思ったみたいで。 「好き?」  と聞いてきた。「うん、好き」とすぐ答える。 「試着しなくても平気?」 「うん。セーターとかは大丈夫。パンツは試着するけど。脚の長さがあわない時あるし」  ふふ、と笑うと、高瀬もちょっと笑いながら、オレからセーターを外して、自分の腕にかけた。ん?と高瀬を見ると。 「オレが買ったら、着てくれる?」 「――うん! 着る!」  いいの?とか思ったけど、あんまり優しく笑うから、嬉しくなって、頷いてしまった。 「あ、じゃあオレも、高瀬の服選んで買いたい。良い?」  そう言うと、高瀬はまた、嬉しそうに優しく笑う。 「何色がいいかなあ……」  いつもと違う色もいいなあ。  思い切って、ピンクとか? ……超可愛いかもしれない!  ウキウキになって、ピンクの服を見ていると、高瀬が近寄ってきた。 「それ織田の?」 「え。あの。高瀬の選んでる」 「オレ?」  クスクス笑って、高瀬がオレの持ってたピンクの服を受け取った。自分にあてて、オレを見る。 「……似合う?」 「うん。すごく。可愛い」  思ってたよりも、もっと似合うー。と思ったのだけれど。  可愛いという表現に、高瀬が苦笑い。 「織田なら可愛いけど……」 「高瀬可愛くちゃだめ?」  しょんぼりしたところで、店員さんが近づいてきた。 「いらっしゃいませ」 「あ。ちょうどいいところに」 「はい?」 「ピンク、どう思いますか?」 「ピンクですか」  オレの問いかけに、店員さんが高瀬の方を見て、おお、と思ったらしい。そんな顔をした。 「めちゃくちゃくイケメンさんなので、なんでも似合いますけど……あれですね、もうすこし、トーンを落としたピンクの方が良いかもしれないですね」 「これだと派手ですか?」 「目立つピンクですからね。こちらはお客様のほうがお似合いだと思います。こちらのお客様、普段は、今みたいな色の服を着られてますか?」 「黒とか青とかです」  オレが急いで答えると、「ですね」と、高瀬がクスクス笑いながら、オレを見る。 「それでしたら、まずは……こういう色はどうですか?」 「おお」  確かに、ピンクって感じのオレが選んだのより、少しくすんだピンクの方が、高瀬には合ってる気がする。 「一枚下に白いTシャツを着て、重ね着風にすると、カッコいいですよ」 「……確かに!」  なんだかものすごく似合いすぎて、めちゃくちゃうんうん頷いてしまう。  高瀬はもう、可笑しそうにクスクス笑ってるだけ。 「今は男の方でも、ピンクを取り入れる方結構いらっしゃいますし。お客様なら、モデルみたいに着こなしそうです」 「元モデルさんなんですよ~カッコいいですよね」  思わずウキウキ言ってしまうと、「あ、そうなんですか」と店員さん。道理で、と笑ってくれるので、めっちゃいい人、と笑い合っていると。 「これでいいよ」  高瀬がとても面白そうにオレと店員さんを見ながら、そう言った。  服をお互い買って店を出ると、高瀬が「なんか、浴衣ん時のデジャヴュが……」と言って、しばらく面白そうに笑っていた。

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