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第7話 クリスマスイヴデモ

「え?」 「お前、笑えてなかったろ。ここに長くいる奴はみんな緩いからな。でも、最初にきた奴は大抵、何かを抱えて途方にくれてることが多いんだ。俺の役目は、そいつの荷を解く手伝いをすることさ。ま、趣味みたいなもんだけど」  確かに、クリスマスに余計な面倒を背負い込むのは、トナカイ気質と言えなくもないのかもしれない。くじ引きで負けたのだって、本当に用事があれば、サボって帰ったって、特に実害はないのだ。好きで残業してたと取られても、しょうがない。  いや、単にひとりの家に、帰りたくなかっただけなのかもしれなかった。 「クリスは、鋭いところがある」 「もっと褒めていいぞ?」 「俺は、確かに、投げやりになってかも。ここへこなかったら、どうしてたか……。自殺とかそういう気分にはならなかったとしても、どこか、心の芯みたいなところが、ぎゅっと硬くなったまま、ほぐれなかったかも」 「……」 「俺、都会に就職したら、違う人間に変われるんじゃないかと思ってた。いつも未来に希望を見てたけど、いざ就職してみたら、マイノリティであることを隠さなきゃいけなかったり、色々……しんどくなってたかも」 「……そうか。じゃ、きてよかったな」 「うん……。ありがとう」 「別に礼なんていいぞ。俺の善意だ」 「……誰かの善意になんて、あんまり触れたことなかった、かもしれない。最近」  ぽつり、ぽつりと言葉を交わすうち、クリスの人となりがわかる気がした。 「それで、イヴデモだけど」 「ん? ああ、何が聞きたい?」 「イヴデモが、ここでゆっくり過ごすことだっていうのは、赤鼻のトナカイから聞いた」 「ウェルカムトナカイのルドルフな。あいつがここのユーザーデータを仕切ってるんだ」 「でも、デモが終わったらどうするんだ? そもそも、いつからこうしてるんだ? あと、トナカイ派遣協会って言われたけど、俺は別に普段、トナカイをしてるわけじゃないんだけど……」  どちらかというとプログラマなのだが、就職してそう経っていないのに、失職するのはかなりまずい。 「イヴデモはクリスマスイヴにするデモで、デモが終わったら参加者は現実に帰る。現実に帰った奴らは、ここでのことをあまり覚えていない。このデモ自体はクリスマスイヴにはじまって、二十四時間で終了。デモ自体は、四百年代に立ち上げられてから、ほぼ毎年続いている。トナカイ派遣協会ってのは、ま、見るのが早いな。こいよ」

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