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第17話 イヴ、ふたりぼっち

 クリスこと栗原瑞希は、奈斗の部屋に上がりこむと、シャンパンを持っていた。 「こんなものしか思いつかなかった。悪いな、イヴの夜に上がりこんで」 「いや。いいけど。でも、どうして」  言いながら、むしろサンタクロースなら、課金してでもきて欲しいと思っていたことを思い出していた。  栗原は「どうしてもお前に逢いたかった」と言った。  栗原によると、イヴデモは本当に存在するアプリらしい。実際は、ユーザー登録すると、近場の人と遊んだり、食事をしたりできる。ただし、イヴデモはマッチングアプリであるが、特別な関係に発展させる必要のない、友だち探しを主な目的としている。  栗原は、イヴデモのアプリ開発をしている株式会社SNTの代表取締役だった。  そこで、ユーザーデータにアクセスし、奈斗の名前を元に位置情報を取得して、この場所を割り出したという。  数年前のイヴの夜に、何となく自分でも試してみたくなり、アプリを私用のスマートフォンにダウンロードして起動させてみた。すると、例の砂浜にたどり着き、自分が何年も前からある目的──漂流している前世の自分の半身の魂の探索──を持って、イヴデモ内に潜入しているサンタクロースであることを思い出した。  最初の何年かは、その目的に懐疑的なまま、遊んでいた。そこで色々なトナカイより情報を得て、ここがどこで、どういう場所なのか、何をしようとして集っているのかを学んだという。その中には栗原が、この場所から出るためには、半身を見つけるより他に方法がないことも含まれていた。  そうして数年が過ぎたあと、ふらりと奈斗がやってきた。  栗原は、ブルネット、という手がかりを元に半身を探していたため、奈斗に声をかけて、話をし、カップリングテストを行ってみた。その結果、パートナーだとわかり、栗原は奈斗の要求に応じ、バックドアを使った。 「漂流者の記憶は漂白されるから、俺もお前も覚えていないことの方が多い。だが、「神」は間違わないんだろう。お前が無一文だったことも、無関係ではないはずだ。俺はずっと、お前を探していた。今日、お前のところにきたのは、逢いたかったからだ」 「でも、「しまった」って……」  あの時、栗原──クリスは確かにそう呟いていた。 「俺がパートナーじゃまずいと思ったんじゃないの?」 「違う。目的を自覚してはいたが、その実、そいつに出逢えるとは思ってなかったんだ。イヴデモに潜入してから、だいぶ派手に動いたから、俺のIDは元々監視対象リストに載っていた。トナカイ同士がパートナーになれば、現実世界でもイヴデモを介して逢うことができるが、サンタの場合はどうなるかわからない。下手をすると、二度と登録できなくなる。あの時は時間がなかった。だから、お前に肝心なことを打ち明けないままカップリングテストをしてしまったことを、「しまった」と思ったんだ」 「それで、ユーザーデータが見たいって……」 「データさえあれば、現世でも何とかなると思った。なぜか、戻っても、俺には記憶があったからな。それに、お前に頼みがあるんだ。だから、意地でも探し出そうと思った」 「頼み……?」

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