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第一章 小屋に住む少年と狼 (四)
それからはまた変わらない日々が続き、変化があったのは約一ヶ月後だった。
この頃になると予想していた通り狼の傷跡はきれいに無くなっていて、狼は昼間にも外に出るようになり少年が目をさます頃には小屋に戻ってくるも足が泥だらけになっていることが多々あった。
今外は一面雪景色であり、日中は溶けた雪が土を濡らして所々ぬかるんでいるからきっとそのためであろう。
少年はみそらに起こされ、いつもの時間に支度をして男を待っていたが、訪問時間を過ぎても誰かが訪ねて来る様子がない。
今日は以前別の場所に移らないかと提案してくれた村の酒蔵の陶治郎が来るはずの日である。
この雪で足を滑らせてやいないかと小屋の外を確認しつつ待っているとようやく陶治郎の姿が見えた。
しかし何故か正雄も共に来ており、正雄の後ろには見覚えのない男が二人控えていた。
「やあ夜くん。外にいるなんて珍しいね」
「陶治郎さんが来なかったから。雪積もってるし転んだりしてたら困るからね。ところで正雄さん、正雄さんの日は明後日じゃない。どうしたの?」
「いやぁね、この陶治郎くんが私に『新しい家を立てたらどうか』とか持ちかけてきたからね。建てたんだよ、新しい君の家」
「え?それについてはまだ考えるって……」
「そうなの?まあいいけど。とにかく建てたんだけど、この人の要望でね、家の設備を強化したらお金がかかっちゃって。依頼主の陶治郎くんに請求したんだけど彼ね、私に頼むだけ頼んでお金は出さないっていうじゃないか」
少年は話の展開についていけず半分聞き流す感じで正雄の話を聞いていた。
「今までのこの家は設備なんてあってないようなものだしそこまでかからなかったから他の人にも使わせてたけどさ、新しい家だとやっぱりそうはいかないよね。だったらしっかりお金を落としてくれる人のところじゃなきゃもったいない」
「なにを、言ってるの?正雄さん」
「君は新しい家で客をとって稼いでもらう。大丈夫、君は男にしては細くて可愛いし、きっと沢山の人に愛されるよ」
あまりに勝手な話に言葉を発することすらできなかった。
しかしそれは正雄にとって承諾の意に捉えられてしまった。
「そうと決まれば早速引っ越しだ。ここよりもっと色んなものがあるいいところだよ」
「ま、待って!僕は――」
「夜くん。逆らうの?君そんな立場にいると思う?これまで生きていられたのは誰のおかげ?」
「っ!」
「私がこの家を建ててあげたからだよね?村の子供達に気味悪がられていじめられて泣いてたよね?大人たちからも色々言われて居場所を失って、それでも生きてこられたのってなんでかな?君に拒否権なんて無いんだよ。新しい家で暮らすのはもう決まったことだ。売られたんだよ、君は。ねえ夜くん、最近おかしいよね。何かこの家に心残りでもあるのかな?」
正雄の冷たい視線に怯んでしまい、身を守るように少年は自分の体を抱きしめた。
「……ここで一人で死にたくなければいい加減受け入れなさい。さあ行くよ」
正雄はくるりと背を向け、陶治郎もそれに続く。
正雄の後ろに控えていた二人の男はというと、迷うことなく少年の背後に回った。
ゆっくりゆっくり少年は足を擦りながら進んだ。
――行きたくない。
すると振り返った正雄は溜息をつき、陶治郎の背を押した。
「早くしろ」
すると陶治郎は少年の手を引き小屋に入った。奥の部屋へ入りその場で少年を押し倒した。
「ごめんね」
そう耳元で囁くと、少年の着物を乱暴にひん剥いて足を開かせた。
陶治郎は自身を扱いてある程度まで大きくさせると、ろくに慣らしもしないうちに少年の窄みへ雄のそれを無理矢理ねじ込んだ。
「あああああああああああぁぁぁっっっ……い、たいよ陶治郎さんっ。なん、で……あぁっ!あぅ、うッ!」
少年は頭の先まで貫く痛みに背中を仰け反らせてシーツを握りしめ、悲痛な叫びを上げた。
それからは地獄のようで、おそらく最初の一突きで切れてしまったであろう孔に構うことなく、陶治郎による抽挿は続いた。
「はっ、あぁ、あっ……あんんっ!んぅっ」
トロッと時折流れる液は、粘液なのか血液なのか、はたまた男が放出した精液なのか最早わからなかった。
ぐったりとした少年の体を陶治郎はお湯で濡らしたタオルで拭きあげ、着物を着せて抱き上げた。
黙々と世話をしていた陶治郎が苦悶の表情を浮かべていたのを少年は不思議に思ったが、先程まで手酷い抱かれ方をしていたせいか、その表情でさえ自分を陥れるための表情なのではないかと思わざるを得なかった。
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