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第一章 小屋に住む少年と狼 (八)

翌朝、日が昇ると同時にシルヴァンは目を覚まし、腕の中にいる夜宵に気づき、声をかけた。 「おはよう、夜宵」 「ん、おはようみそら」 シルヴァンは、寝ていると思っていた少年がひょこっと顔を出したためかなり驚いたようだった。 「眠れなかったか?」 「いや、眠れなかったんじゃないよ。ああいう生活をしてたせいかな、夜は基本的には目が冴えてるんだ。昼間寝ちゃったらごめんね」 「大丈夫だ。夜のうちに馬車を用意したから、夜宵は馬車移動だ。眠くなったら寝るといい」 それから二人で軽く身支度をし、シルヴァンは隊の制服に、夜宵は背丈が近い獣人が居なかったためシルヴァンの持っていた服を折って仮縫いをして着用した。 テントの外に出ると兵の狼たちは集まり整列をして待機していた。 号令から始まり獣人の国へ向かうことと、夜宵がシルヴァンの命の恩人であり同行することが全員に伝えられた。 集会が終了するタイミングで馬車が到着し、隊列を組んでキャンプ地を出発した。 通常徒歩での移動で、荷運びには馬やラクダなどの動物が起用される。ヒトである夜宵を気遣い今回は馬車が用意され、それに付き添いシルヴァンも馬車に乗っていた。 案の定夜宵はすぐに眠気に襲われ、シルヴァンの膝枕で仮眠をとった。 シルヴァンに起こされた時には景色がガラリと変わっていて、目の前には広大な海が広がっていた。 夕陽が沈みかけた海は光を浴びてキラキラと輝いている。 人生初の海に感動して大騒ぎする夜宵をシルヴァンは優しく見守っていた。 それから海岸線に沿って進むと小さな港のような場所が見えてきて、そこに一隻の船が停泊していた。 「夜宵、あの船に乗るといよいよレン――ヒト族の国――には簡単に帰ってこられなくなる。いいか?」 夜宵は頷いて返した。 一行が乗り込んだ船はいよいよ獣人の国へ向け出港した。 道中夜宵は初めての船で船酔いし、仮眠を取りながらやっとの思いで獣人の国、ベスティアへとたどり着いたのだった。 〔第一章 了〕 **** 以下本編内容ではありません。不要な方はスルーしていただいて大丈夫です。 「翼に愛を」をお読みいただきありがとうございます。 今回は少々文字数少なめで物足りなさがありますね。配分が上手く調整出来ておらずすみません。 今回で第一章が終了となり、次回からは第二章、獣人の国べスティアでのお話になります。 この先二人がどうなっていくのか、書いている私もドキドキしています。 一緒に見守っていただけると嬉しいです。 亜珠貴

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