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第二章 獣人の国と少年 (十五-後)

「さてヒト族の子、まずは騙していて申し訳なかった。気づいたかもしれないが前に私達で話した部屋は私の部屋ではない。この部屋が本当の私の部屋で、あの部屋はただの客室だ」 夜宵は気づいている、と伝えるように一つ頷いた。 「さっき少しシルと話してシルの気持ちは知ったからね。隠しても仕方ないし全部話そうと思うんだけど、夜宵くんはどうする?私が言うのも何だが、あまり良い話ではないから外で待っていてもいいが」 レオナルドはまっすぐ夜宵に目を合わせてはいるが、答えを急かす様子はない。 隣にいるシルヴァンに目を向けると、夜宵の好きにしていい、と言われたため、夜宵は現状を受け止めるべく話を聞く方を選んだ。 レオナルドは夜宵のことを初めからよく思っていなかったことを始めとし、アリア嬢を呼びシルヴァンにわざとべったりくっつかせ、更には夜宵を煽らせたことを話した。 そして今回の騎士たちの住む使用人棟に夜宵を連れて行ったことについては、計画としては夜宵を連れて行き騎士たちのにするつもりで騎士を何人か買収していたことを明かし、そこまで話したところでシルヴァンは机を挟んで正面に座るレオナルドの襟元に掴みかかっていた。 「ちょ、シルヴァン!」 「はは。怖い怖い。シルがこんな反応するなんてねぇ」 レオナルドはシルヴァンに襟元を握られたまま話の続きを始めた。 買収して夜宵を連れて行ったところまでは計画通り、しかし問題はその後起こった。 夜宵を陥れるためにレオナルドが買収したのは一部の騎士たちだけであり、何も計画を知らない騎士たちは毎晩夜宵が一人寂しく外に出ていたのを知っていたため夜宵を歓迎してしまったのである。 「本当なら君を彼らの餌にしてその体をボロボロにしてしまえばシルも君から手を引くだろう、そうしたら王族らしく婚約して子供を生む、そんなに戻せると思ったんだ。その時は君のことはシルの気まぐれなお遊びとしか思っていなかったからね。けれど違った。シルは君のために婚約を破棄して君と番うことを国王に認めさせた」 夜宵は思いがけない言葉に口をポッカリと開けている。 婚約をしていることを知ったばかりだったが、なんとその婚約は破棄されたという。 この王宮に来てからというもの話の展開に全く追いつけないまま、夜宵の知らないところで知らない話が進められている。 ただ先程の話の中に、シルヴァンと夜宵が番うことを国王に認めさせたという話があった。 しかし夜宵が国王に謁見したときは直接言われた言葉の中にそれらしいものは含まれていなかった。つまり…… 「ねえみそら、僕みそらから聞いてないこと沢山あるんだけど」 レオナルドの胸ぐらをつかんで怒りを顕にしていたシルヴァンだったが、夜宵の一言にビクッと反応し、しっぽを足の間に隠し、毛を逆立てゆっくりと夜宵の方へ首を捻った。

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