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第二章 獣人の国と少年(二十七-前)
夜宵とシルヴァンが里に着くのを里の入口で今か今かと待っていたタルデは、二人が到着するなりすぐに応接間へ通した。そこには既に里長と、あと二人の鳥獣人が待機していて、重々しい表情で座っている。
促されるまま二人は腰を下ろす。
「二人とも、よく来てくれた。結果から言おう。やよいくんは夜鳥獣人の血を引いている。そして父親も、この里の者だった」
やはり、とシルヴァンは頷く。夜宵は驚き半分、納得半分といったところだろうか、不思議な表情になっている。
「それで、結果は……」
里長は渋い顔を浮かべながらゆっくりと口を開く。重厚感のある声で一言、ただ一言が発せられる。「私だ」と。控えた鳥獣人は知っているようで驚かないが、シルヴァンはというともはや言葉を失っている。開いた口が塞がらないとはまさにこのこと。夜宵は、何となくだがそうではないかと感じていたため、驚きはしたがそこまでの反応は出なかった。
里長は深々と頭を下げる。
「夜宵、いや、夜宵くん、本当にすまなかった。十二年前、君と君の母を残し離れてしまったこと、またその後見つけられず助けられなかったことも全て。君に償いきれない傷を与えてしまい、本当に申し訳ない。私は君の父親だが、父親を名乗る資格はないと思っている」
「ちょっと、やめてよそんな……。もう、いいんだ。あの時があったから僕はシルヴァンと出会えた。だから、そんなに謝らないで」
それでも頑として彼は頭を上げなかった。否、上げられなかったのだ。後悔、自責、それは彼をこれまでの人生で一番締め付けた。
しばらくしてゆっくりと顔を上げた彼の目には雫が溜まっており、ゆらゆらと揺れ、落ちた。さらり、と彼の黒髪が背から落ちる。彼も夜宵と同じ黒髪で、かつての夜宵のように長く伸ばしている。
「もし良ければだが、その、夜宵くんと二人で話す時間を貰えないだろうか」
恐る恐る、といった様子て里長は二人に問いかける。
「ねえシルヴァン、里長と話す時間を貰ってもいい?」
固まったままだったシルヴァンを揺する。
「あ、ああ。俺は構わない」
人払いをし、部屋には里長と夜宵の二人きり。しばらく沈黙が流れる。机を挟み向かい合うように座る二人。去り際お付きの二人から茶を差し出されたのだが、その茶の湯気も段々と消えかかっている。
「あの……」
先に発したのは夜宵だった。
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