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第3話
そこは、とあるビルの地下にある。
ビル自体もこじんまりとしていて、あまり人が通る場所でもない。
ビルの中に入り、エレベーターで地下へと向かう。
地下1階に着きドアが開くと、まるで喫茶店のような入口が目に入る。
ドアには Espoir と書かれた札が下がっている。
ここが俺の勤め先。
合鍵を利用してドアを開け、灯りをつける。
店中もカフェのようになっており、椅子と机が所々に配置されカウンターもある。地下なので窓はないが、観葉植物が多く置かれたオシャレな雰囲気だ。ミツリ曰く、
「前までは友達が運営してたカフェだったんだけど、俺が貰ったんだよね。物を全部残していったから、片すのも面倒でそのままにしてるんだ。好きに使っていいと思うよ〜」
なので、机や椅子、食器はしっかり残っているため本当にカフェが今からでも開けそうな状態になっている。
正直、何でも屋よりも今からでもカフェを開いた方がいい気がする。
荷物を適当に置いて、カウンターで何か飲もうとした時
カラーン
と、入口のベルが響き誰かが店に入る音が聞こえた。
ドアの方を見ると、そこにはオドオドとした男性がいた。年齢は30代辺りの、ピシッとしたスーツを着た貧弱そうなその人は、小声でたずねた。
「あの…ここ、何でも屋って聞いたんですけど…」
「あ、はい。そうです。お話を聞きますよ」
今日も新しい依頼がきたようだ。
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