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第6話
そして、森永さんとの約束の日が来た。
結局、ミツリとはまともに話はできなかった。
話そうとしても彼は家に帰ってこない日もあり、帰ってきたとしても俺が起きる頃に寝るというズレた生活を送っていた。
なので今日も、俺の姿を見ているとは言っていたが怪しい。
森永さんからの電話で教えられた待ち合わせ場所は、犬の銅像の目の前。
「遅いな。大丈夫かな…」
腕時計を見ると、9時20分頃を示していた。
待ち合わせの時間は過ぎている。
「…電話してみるか」
すると、バタバタとこちらへ向かってくるスーツの男。
「はぁはぁ、すみません!遅れてしまって…ほんと…」
その男は森永さんだった。
彼は両手に紙袋を持った状態で走っているので、割と目立っていた。
「森永さん、気にしないでください!それよりも大丈夫ですか?すごい荷物ですし…」
「早速ですがお願いがあるんです!」
そう言って渡されたのは彼が持っていた大量の紙袋。
「え、」
「戸惑うのも無理はありません。とりあえず、これに着替えてきてください!」
「…え?」
俺は近くのビルのトイレで中身を確認した。
「…なんなんだこれは…っ」
紙袋の中身に入っていたものへ着替え、森永さんの居る場所へ戻った。
「…森永さん…着替えてきました…」
「!!」
彼のやつれていた顔がパッと明るくなった。
そして拍手をしながら早口で語る。
「やはり俺の目に狂いはなかった!素晴らしい。とても似合っていますよ。そのお姿!長い時間かけて洋服を決めたかいがありました。」
「…は、はは…」
俺は苦笑いしかできなかった。
紙袋の中身は、黒髪のロングストレートのヴィックと女の子用のゴスロリチックなワンピースが入っていたのだ。
どこかにいるミツリの笑い声が聞こえた気がするのは気の所為だろうか。
帰りたい…。
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