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第9話

助けてもらったことによる安心感はあったが、ミツリと何を話したらいいのか困った。 ミツリときちんと顔を合わすのは、俺がミツリに触って怒った様子になってしまってから以来だ。あの時、謝りはしたが何を話したらいいんだろうか。 けれど先に話しかけてきたのはミツリの方からだった。 「綾人、その服マジで最高。もうっ…笑いが…っ」 「!」 自分が女装していることをすっかり忘れていた。 「やめろ、笑うな!依頼なんだからしょうがないだろ!」 「いや分かってるけど…。あー面白い。でも似合ってるよ本当に」 ミツリは涙を流しながら笑い続けた。 少し拍子抜けした。気にしていたのは自分だけだったのかもしれない。 すると、飲み物を持って森永さんが戻ってきた。突然現れたミツリにもちろん驚いている。 「店長のミツリさん、でしたよね?」 「はい、そうです。そろそろ依頼の終了お時間なので綾人を迎えに来ました」 まさか依頼中、ずっとミツリが見ていたなんて言えないから、まるで今来たかのように伝えると「なるほど。もうそんな時間なんですね」と言って森永さんは時間を確認した。 「つい楽しくて時間を忘れていました。とりあえず綾人さん、飲み物どうぞ」 「ありがとうございます」 森永さんはお願いしたコーラを買ってきてくれた。俺はそれをお礼を言って受け取る。 そして森永さんはミツリの方を見て話した。 「今日は本当にありがとうございました。ミツリさん、綾人さんは俺のわがままに付き合ってくれる本当に良い方でした」 初めて会った時と違い、ハキハキとした話し方で、しっかりとミツリの目を見て話した。 今日一日のことをそれほど感謝しているという現れだろう。 俺が話そうとすると、ミツリが遮るようにして応える。 「ご満足していただけたようでよかったです。けれど、少しお話と違いますね。こちらはただの買い物と聞いていたのですが…」 ミツリが俺の服装をジロリと見る。 すると森永さんは頭を下げた。 「そのことは本当にすみません。私が依頼を断られると思って、当日にお願いしたんです」 「なるほど。そういう事でしたか」 ミツリは今知ったかのような驚いた表情を作った。 本当は初めてあの店で森永さんに会った時から考えていることを読んで知っていたくせに。 少し考えたあと、ミツリは告げた。 「それでは、今回の依頼金額はそのことを踏まえた上で10万円でどうでしょうか」 俺はその金額に驚いた。 なぜなら、ミツリにしては提示した金額が安いからだ。

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