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夜彦の本心
「貴方様から負の感情を感じませんでした。ですから、やつがれも憎しみや恨みなどを抱かなかったのでございます。守りたいと強く思う気持ちのみでございました」
夜彦はおほほと笑い、さっき噛み付いた首の後ろに口づける。
「日に日に愛くるしさが増していく貴方様を幾度と食べてしまいたいと思ったかお判りでございますか。可愛い弟を前に男が廃る様が出来るとお思いになりますでしょうか……嗚呼、長々と語ると馬鹿が露呈してしまいますので、好まないのでございますが」
とほほとなげく夜彦だけど、それが夜彦らしくて好き。
「ううん、いいんだよ。どんな夜彦でも好きだから」
「本当に貴方様には……敵いませんね」
ふっと笑う夜彦はやっと毛先を紙に落とした。
"朝日"と慣れた手つきでキレイに書いた夜彦はふふふと笑みを漏らす。
「しかしながら、『運命に抗え!』とはよく言えたものでございましたね」
ほっほと笑い、大きく払いを書く。
「運命に翻弄されてきた貴方様が仰るとはいやはや。自尊心の欠片もなかったお方が半月でここまで成長なさるとは……やはり貴方様は恐ろしいお方でございます」
ゆっくり、丁寧に書いていくから、僕を大切にしてくれているのが痛いほど伝わる。
「だって、夜彦に助けてくれたから……恩返ししたかったんだもん」
また同じようになっても、ディープキスで救うから。
「やつがれの心の芯まで響き、沁み渡りましたよ。素晴らしい名言でございました」
夜彦は大きく息を吐いて、毛筆を置いた。
『朝日夕馬』と象形文字のような感じに書かれている。
まだ、この温かくてうれしい感情を表現できるくらいの言葉を知らない。
もっと勉強しなきゃ……みんなと一緒に。
「ありがとう、夜彦」
とりあえず、感謝を伝える。
「このようなことは造作もございません。しかし、あの……」
珍しくいいよどむ夜彦。
「なに?」
僕は振り向こうとすると、強く抱きしめられて止められた。
「貴方様に沸き上がっている感情をやつがれに少しお分けくださいませ」
うんって返事をする前に夜彦はまた噛み付く。
ゴキュ……ゴキュ
静かに
でも強く
夜彦の中に流れていく。
「……ぁ……ぅぁ……」
ようちゃんと真昼に怒られないように、小さく喘ぐ。
「なんでハワイの花、描いてるの?」
「ようこそ、日本の桜やんか」
「だって祭りだから、平和で楽しい感じでよくない?」
「そやな」
ニッと楽しそうで仲良くやってる2人。
丸がつながったものが天井にたくさんぶら下がっているし、写真もたくさん飾られている。
とってもにぎやかだ。
「あらあら、大きい声を上げていただいて良かったのでございますよ。そしたら、綺麗なお声さえやつがれのものへいたしましたのに」
クスッと笑うから、夜彦も意地悪だ。
「夜彦、大好き。ずっと側にいて」
「同じくでございます。こちらこそ、よろしくお願いいたしますね」
僕たちは誓いのキスをしたんだ。
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