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第2話 嘘だと思いたい

 男はがばっと覆いかぶさってきて咲太の両手を押さえつけた。咲太の手首を掴んだ手はびくともせず、足をばたつかせても、体をねじっても、無駄な抵抗に終わった。 「ちょっ、な、何してんのっ」 「サク、俺さ、本当はさ、サクのこと好きだったんだ」 「え」 「でもサクのタイプは今の俺みたいな男だろ? だから細身の小柄の俺なんかタイプじゃないんだろうなって思って、言い出せなかった……」 「だったら、なに、それは淳吾と僕の問題でしょ、あなたには関係ないじゃん! 手ぇ、離してよっ!」 「だから俺が淳吾なんだっつうの! ……やっぱサクってこうやって見ても可愛いや。お前のこと抱きたい、つうか、抜いたら戻るから、そのとき俺の言ってること信じてもらえると思う」 「い、いや、ちょっと、やめてっ、抜くんなら一人でやればいいじゃん!」 「さっきはそう思って、風呂場で頑張ってた……でも、なかなかいかなくて……。そろそろお前に告白したかったんだ。先週は自分んちだったから抜けたけど、やっぱここだと緊張して……だから長かったでしょ? やっぱりお前のこと好きだから、お前とやって抜きたいっ」 「ちょっと、やだよ、待っ…………んんんっ、っく、ふっくぅ……ぅく」  視界が暗くなったと同時に唇が塞がれた。 「んん、んん、んん……っ!」  顔を背けようとすればするほど、男の大きな口の中に咲太の小さな口が埋もれていき、舌が深く入ってくる。 「あう、んあ、わ、わ、んん、うう」  肉厚で長い舌に口内をかき回されると、嫌だと思う気持ちが抵抗しなきゃという義務感に変わる。唇と口の中に生温かいぬめりの摩擦が繰り返されて、だんだん義務を放棄してしまう自分がいた。だめ……、お願い……、こんな形で……、タイプの男に抱かれるなんて……。  咲太の力が抜けた途端に、逞しい腕が背中に回され太い首が咲太の細い首に横づけされ耳の中に舌が入ってきた。 「サク……可愛い……ずっとこうしたかった……サクも感じてんじゃん」  耳を舐められる音と卑猥な囁きが交互に聞こえる。 「……だめ……っ」 「ん? 何がだめ? ちゃんと言わなきゃやめてやんないよ」 「や……だ……めぇ、んあっ」 「ほら、やっぱ感じてんじゃん、もっとしてやるよ」 「あ……待ぁっ……」  咲太の首筋を男の舌が這い回り始め、鎖骨に沿って動き、乳首に一気にしゃぶりつかれた。 「ああっ! だめっ!」  なんでこんな小さな先端から意思を奪う程の快感が全身に走るのだろう。男はちゅるちゅると音を立てながら舌を高速で動かした。 「あん、あっ、はぁ、んん、おか、しく、おかしく、なっ……ちゃ、あああ!」  乳首を唇で挟んで引っ張られた。唇から解放された瞬間に快感の電撃がさらに渦巻く。  男は憑りつかれたように愛撫を繰り返し、脇の茂みや横腹やへそに舌を這わせた。 「も、もう、だ、だめっ」  咲太が抵抗しようとした瞬間に短パンを一気に脱がされ、ボクサーパンツだけになった。 「あ……」 「サク、ここもう濡れてるよ、なんで?」  咲太が手で隠そうとすると、その手を掴んでカーペットに押し付けられた。男が片方の手で咲太の濡れた部分を指で弄った。 「あんっ、やだ」  と声を漏らしたと同時にボクサーパンツを太ももの付け根までずり下ろされた。 「やめてっ」  咲太は顔を背けた。抵抗しないといけないのに、男が脚を押さえていて身動きが取れない。一番隠したい部分が露わになって、一種の諦めみたいなものが咲太の力を緩めた。 「びんびんじゃん、それにめっちゃ濡れてるよ……やらしいなあ」  見られていると思うと咲太の先端が勝手にぴくんぴくんと動いてしまう。動くたびに何かが溢れるのが自分でも分かった。 「うわぁ、がまん汁どんどん出てくるよ」 「……見ない、で……」 「じゃ、見るのやめてこうしてやるよ」  何をするのかと思った途端に、先端が熱いものに包まれた。目をやると男の口にすっぽりと根本まで咥えられていた。 「あっ、そ、んな、や……」  男は何の躊躇もなく頭を上下に動かし、咲太に快感を与えた。しばらく抜いていないせいかそれはすぐにせり上がってくる。 「だめ、あ、あ、い、いき、いきそ、んん」  男は急に口から外した。 「まだ、いかせねえ」  すると今度は咲太の両脚を軽々と持ち上げ、窄まりを天井に向けさせた。 「や、な、なにす、んのっ」 「やっぱここもきれいで可愛い……桜の花びらみたいだ……うまそう」  男は咲太の穴を野獣が肉を食らうようにしゃぶり始め、舌を穴の中に入れて動かした。 「ああっ、だ、なっ、だめ、だめって、ばっ!」  秘密の蕾が粗暴な舌で無理矢理開花させられていく。恥ずかしさはあっても嫌だとは思えなくなっていた。滑りのある熱い軟体は、媚肉の抵抗をいとも簡単におとなしくさせて、受け入れの準備が自然にできてしまう。  執拗に穴を舌で広げられてしまい咲太は状況判断ができなくなった。舌が一気に抜かれて穴の入口に快感が集まって咲太は嬌声を出した。 「あああっっん、んんあっ」 「サクの穴、生き物みたいに動いてて、きゅっきゅ締まる」 「やだ……」  初めて感じる快感に酔いしれている自分がいた。男に抱かれる悦びの花が、咲太の意思とは関係なくもう咲こうとしていた。 「もう指入れなくてもよさげだから……今度はこっちで」  男はサイズが合わなくてブリーフみたいになっている自分のボクサーパンツの中心に手をあてがった。そこはこんもりと盛り上がって、はち切れそうになっていて、巨大なキノコみたいなものがはみ出していた。 「……ぉ、おっきぃ……」 「ここだろ? なんか体もでかくなったら、ここもそれ相応になっちゃってさ」  男は下着を太ももまでずらした。その途端、太くて長い屹立が跳ね上がるようにしなって上を向いた。まるでそこに意思があるみたいに、ひっくひっくと上下に動いている。 「むり……」  咲太は思わず口に手をあてた。 「大丈夫だって、ほぐしたから。サクもしかして巨根好きだった?」  咲太は顔を横に振りながら這うようにして逃げようとしたが、細い腰を大きな両手で掴まれ人形のように軽々と男の方に引き寄せられた。 「ぃ、やだ! やめて!」 「サクの可愛い顔見ながらがいい」  くるんと仰向けにされ脚を持ち上げられた。抵抗する間もなく、もうすでに熱くて大きなものがそこにあてがわれていた。変に動くと間違って入りそうで恐くなり動きを止めた。 「もう広がってるし、ゆっくりするから」  ずちゅっと音がしてそれは入ってきた。圧迫を感じた後、穴の壁が甘く擦れる快感が襲ってきた。 「んんあ……っあ、んっ」 「おぉ……サクの中、超気持ちい……あったけえ……わ、入口締まるぅ」 「だめっ……んっあ……いっ、ああ」  舌で広げられた窄まりは痛みらしい痛みはなかったが息苦しさのような感覚が奥から生まれた。欲棒の長さの分だけ、媚肉の一方通行の摩擦の時間が長くなって息ができない。押して引かれるたびにその感触が永遠に続くように感じられ、声が裏返ってまた息が止まりかける。そして奥の行き止まりに体当たりされて心臓まで響いてくる。 「ひあ……っ、あ、当たりすぎっ、だ、おか、しくな、っっちゃ……ぅああん!」  ゆっくりだった男の腰の動きがだんだんと勢いを増してくる。初めてなのに感じてる自分が恐かった。なんでこんなに感じてしまうの。やっぱり広がってたから? やだ……やばいよ。助けて欲しい……。それは行為をやめることではなく、快感の渦に巻き込まれ過ぎないようにして欲しいという気持ちだった。  男の腰の動きが道半ばで止まった、かと思うと、男は腰の角度を少し変えた。咲太は薄目を開けて男を見上げた。男は片方の口角をにやっと上げた。精悍な顔がその表情をまとうと咲太の淫猥を呼び起こしてしまう。 「ここは、感じる?」 「え……」  と咲太が言葉をこぼした途端に、男の肉棒が寄り道するように咲太の筒の途中で別の場所を突き上げた。 「んああああっ!」  咲太の嬌声が響いた。小さなボールが咲太の途中にある壁に埋め込まれているかのように今までとは明らかに違う感覚が走った。咲太はカーペットをむしり取るように掴んだ。 「だめぇぇぇ! んんんっ! はあああ!」 「サクのその顔見たかった……」  咲太は無我夢中で首を横に振った。男は容赦なく、ぐりぐりと押し付けてくる。 「ああ、ああ、いやぁ、ん、あ、ひぃあ!」 「壊れたらやばいからこれくらいね」  男はそう言うとまた奥の方に肉棒を向け直し、奥行きのあるピストンを始めた。快感の種類が変わると安心のようなものが生まれ、咲太は放心した。 「サク、よだれ出ちゃってるじゃん……」  男はそう言うと咲太の頬から唇にかけて舐め上げ、そのまま口を覆い唇を吸われ、口の中を舐め回された。咲太のいろんな場所に快感が走って芯から何かが迸ろうとしていた。 「……も、もう、だめ、僕だめ……」 「何がだめ?」 「いき、そう」 「触ってないのに? 可愛いよ、俺もいきそう、サクのとろけた顔見ながらいきたい」  咲太は自分の屹立には触れていないのに絶頂を迎えそうだった。男の腰の動きがさらに速くなった。男の大きな二つの袋が咲太の尾てい骨に貼り付くように当たってくる。 「あっ、あっ、だ、だ、め、え、あっいく、いく、いく! ってばぁぁ!」 「俺も、……ぅおお、いくぞっ、サク、一緒にいこぅっ!」  同時に雄叫びと嬌声を上げて体が小刻みに震えた。どくんどくんと中心の洞窟に熱い溶岩が流れてくる。咲太は性器に直接刺激を与えずに射精してしまい、自分のお腹に白濁が飛び散った。外からも中からも温かいものが広がる。  男と目が合った。男は痙攣し顔が歪みながらも咲太をしっかりと観察するように見下ろしている。 「サクのいく顔、見たかったんだ俺……」  と言った途端に異変が起きた。男のシルエットがだんだん縮んでいった。圧し掛かっていた重みも軽くなり、思わず掴んでいた男の逞しい腕もみるみる細くなっていく。お尻の穴に感じていた苦しいくらいの突っ張りも緩み始めた。  昇天したばかりの自分のぼやけた思考ではちゃんと考えることと反応することができずに目の前の現象を見ることしかできない。 「ぇ……え……なに、……ぇ……」  男の肌の色も褐色からだんだん色白になっていき、精悍な顔つきは柔らかい童顔に変化していった。その顔は毎日のように見ていた顔だった……じゅ、淳吾……?!

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