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第8話 だから、変身しないでってば
「ああ、もう……」
咲太の肩に大きな何かが置かれた。横を向くと淳吾の手だった。
「仕方ないでしょ、自分でそう悟ったんだから。俺たちは嘘はついてないし何も悪いことはしてない」
「……そう、だけど」
「だから」
「でも友達なんだよ?」
「そうだけど」
淳吾はそう言いながら咲太の代わりにドアを閉めた。
部屋でへたり込む咲太の背中に温かいものが覆った。太い腕が現れ、首にも熱を感じた。淳吾が後ろから抱きしめていた。
「ちょっと、なにしてんの」
「いいじゃん」
「やめて」
「やめない」
「んもう、淳吾」
咲太は振り解こうともがいたが、たくましい体に動きを封じ込められてしまった。
「淳吾、こんなときにこんなこっ……んんん」
振り向きざまに口を塞がれた。
「んん、んん、あう、あっえ、うう」
咲太の抵抗とは裏腹に、唇には丁寧に淳吾の舌が這い、押し付けるように濡らされていった。
「あえ、え、おう、……んん、んっ」
淳吾の腕を押し返す力がだんだん弱まっていき、鼻から息が抜けてしまう。と同時に淳吾の長い舌が咲太の歯裏を舐め、上顎までまさぐられる。舌に舌をからめられ、淳吾の熱い唾液が流れてくる。
淳吾はキスをしたまま咲太を大事そうに抱きかかえ、膝を立てたままゆっくりと布団の上に降ろした。
口はまだつながったままで、淳吾の腕が咲太の肩と背中に回りしっかりと抱きしめられ、淳吾は咲太の股の間に下半身を滑り込ませた。完全にホールドされた状態になり咲太は身動き取れない甘い圧迫感に酔いしれていく自分を感じた。
淳吾の鼻息がだんだんと荒くなっていく。舌の動きも荒くなり、淳吾は服の上から下半身の真ん中を咲太に擦り付けるような腰の動きを始めた。
ようやく唇が解放されたと思うと、淳吾の唇は咲太の耳元へ移動した。
「サク、愛してる、マジで大好きだよ」
「……ぅだめ……あ、あ」
淳吾は言葉の次に咲太の耳の中に舌を入れて熱い息も吹きかけた。
「ああ、ん、だめっ」
「だめじゃないよ、ほら」
抱きしめられたまま首筋を甘噛みされて、果物の汁を求めるようにすすられた。
「ん、ああっ、だん、えぇ……」
咲太は思わず淳吾の厚くて広い背中に腕を回して抱きしめ返していた。
「可愛い……サク」
淳吾は呆けた顔を斜めにして唇に吸い付いてきた。
「んふぅ、ん、うう」
深い口づけをしながら、淳吾は咲太の肩と背中に回していた腕を戻し、咲太のシャツを一気にめくり上げた。
「うう、んんっっっ」
咲太には何もすることができす目を開けると、淳吾の鋭い目と合ってしまった。目と目が合ってもキスがやむ気配はなく、永遠に続きそうな舌の動きに麻痺されそうになって目を閉じかけたとき、唇への圧力が消えた。
目を開けると淳吾の頭は即座に動き胸元からこちらを窺っていた。
「サクのここ、感じさせてやる」
「え……ちょ……待、あっはっあっんっんっ」
一気に乳首が淳吾の口の中に飲み込まれ、もう片方は指先で弄られた。黙っていることができないような快感が体を駆け巡った。
「ああ、あ、は、んん、いはぁ」
咲太は、苦しいくらいの快感を体から逃がせたくて淳吾の固い肩や腕を掴んだ。でもそこはビクともせず、絶えず動く舌と吸い上げる唇に無駄に抗った。
淳吾の愛撫は途切れることなく、お腹やおへそに移り、あっと言う間に脱がされた下腹部へと移った。
アイスでも頬張るように咲太の屹立は濡らされ、嫌でも中から出てくる液体のせいか、唾液のせいか分からないくらいにヌルヌルになった。
全身を襲う快楽が咲太の理性をだんだん奪っていく。力が入らない。自然と首が反れて口が開いてしまう。
「咲太がどんな顔してよがってるか見たい」
足を持ち上げ下半身を折り曲げられ、蕾が露わになった。容赦なくその割れ目に淳吾の舌が這わされる。
「ああ! だめ! んんああっ、ジュ、ン」
ぴちゃぴちゃと淫猥な音が響く。指で広げられた穴に舌が当然のように入ってくる。押したり引いたりを繰り返した。
「指入れるぞ」
気持ちの準備ができないまま淳吾の指が蕾を割って入れられた。
「ああぅ……はあん……ん」
「サクその顔可愛いぞ、もっと感じろよ」
抜き差しされるたびにこそばゆいような緩い痺れが咲太の言葉を失わせた。口は開いているのに言葉が出てこない。
「っ……っ……はっ……んは……」
「はい、二本目」
「っ……ん……あ……ふ……」
「いけそうだね、じゃ三本ね」
「あっ、いっ、……っんあ!」
咲太のシーツを掴む手に力が入る。
「ひくひくしてんじゃん。欲しい?」
「……」
「サク、ちゃんと言わないと入れてやんないぞ。欲しい?」
「……ぅ、ん……」
「何が?」
「……いじわる」
「ほらちゃんと言え」
「……ジュンの、が、欲しい」
「どこに?」
「……僕のお尻、に……」
「よーし、いい子だ、入れてやるよっ」
お尻から指が抜かれたと思ったら腰を掴まれひっくり返され、うつ伏せになった。
首筋に温かい軟体が絡んだと思うと、そのまま背骨に沿ってその軟体が動いた。
「はああんっ」
淳吾の舌はお尻までくると、お尻の頬を音を立てて吸い上げ甘噛みした。
「あはあっ」
腰を持ち上げられ四つん這いにの格好になった途端に、突き出した窄まりにじゅるじゅるという音が鳴って快感が走った。
「ああ! そこ、ああ、だめ」
手で力いっぱいに広げられたそこには舌がまた奥まで入ってきた。
「いい感じになってるぞ、ここ」
淳吾の動きを気配で感じた。
「こっち向けよ」
咲太は四つん這いのままそろっと首だけで振り返った。淳吾は膝立ちであそこを持ちながらこちらを見下ろしていた。
「いい顔してんじゃん。体ごとだよ」
咲太は四つん這いのまま回転して顔を淳吾の方へ向けた。太くて長くて流線型の勃起したペニスが目の前でしなっていた。
「何するか分かってるよな?」
咲太は恥ずかしさと困惑で首を横に少し振った。
「わかんないわけないだろ」
淳吾は、その赤褐色の大きな肉棒を咲太の頬に数回打ち付けた。ぺちゅぺちゅという音が咲太の顔で鳴った。
「あ……いや……」
咲太の口が開いた拍子にその肉棒が口に押し込められた。
「うう、んん、っっ」
淳吾は咲太の頭を押さえ腰を動かした。
「おおぉ、気持ちいいぞ、サク」
淳吾の低い喘ぎ声が咲太の口元を緩めた。口の中いっぱいに満たされる大きさに咲太の自制が乱されていった。自分から淳吾の腰を持って頭を前後に動かし始めた。
これで満たされたい。これが欲しい。淳吾は自分のことをずっと好きでいてくれていた。それがこの咥えている愛棒が象徴しているのだとすれば、これが愛しい。
咲太は口から淳吾は外し、見上げた。
「もう、入れて……」
淳吾は片方の口角をにやっと上げ、咲太の顎をそっと持った。
「サク、やっぱりお前は可愛いな。俺も入れたい」
淳吾の顔がそのまま下りてきてキスをした。数回舌を絡ませると、淳吾はうっとりした顔のまま咲太を見つめた。
「また咲太の可愛いお尻を俺に向けて」
「うん……」
咲太は犬がお回りするように動き、お尻を突き出した。すぐにあてがわれた淳吾の屹立はどくどくと脈を打っていた。
ぬるっとした感覚の後にはすぐに甘い摩擦が起き、心地良い圧迫を蕾の奥で感じた。
「んっああっ! いい! おっきいぃ!」
「ぅぉお、締まるぅ、奥も絡みつくぅ」
「当たるぅ! ああ、お、奥、奥にぃぃあ!」
胃から心臓に貫通したのかと思うような淫猥な鈍痛がした。ゆっくり戻され、またゆっくり奥まで入ってくる。咲太の穴の中を味わうように淳吾の動きはゆっくりだった。
スピードが遅い分、襞を擦れて行く淳吾の淫棒の温度や皮膚の凹凸まで感じ取れ、これ以上ないくらいに近くに感じる淳吾が一層愛しくなった。
そう思っていると淳吾の動きがだんだん速くなっていった。咲太の細い腰を両手でしっかりと掴み、破裂するような音を立たせながらがっしりとした腰をぶつけてくる。
「あ……っ……は……っ……あ……っ」
体が前後に揺れるたびに、突き抜けるような鈍い快感を体の芯に感じ、何も考えることができなくなっていく。
淳吾が後ろから覆いかぶさり、咲太の体に片腕を回した。かと思うと、上体が後ろに傾き、布団に座った淳吾の上に後ろ向きで跨る格好になった。咲太の体重が全て淳吾に乗った途端に、体の芯を突き破るような重みが走った。淳吾の屹立が目いっぱい咲太の中に入った。
「ぅあああああっ!」
淳吾は大きな手で咲太の太ももをそれぞれ掴んで持ち上げ、まるで人形を操るように淳吾の膝の上で自由自在に上下させた。
「ああ、ん、はは、ん、あは、ん」
「せっかく体もあそこもデカくなってんだから俺をもっと感じろっ」
「だめっ、おか、おかし、おかしくなっちゃうよぉぉ!」
「俺の前だけならおかしくなっていいから!」
淳吾の力による上下運動は増々激しくなり、何かのマシーンのように咲太の体は一定のスピードを保ったまま部屋の景色を上下に狂わせた。
「だめ、だめ、だめ、ああ、ほんとに、ああ」
咲太は目が回りそうになり、それを振り切るように頭を横に何度も振った。そうしているうちにいつの間にか天井を見ている自分に気付いた。体の奥から上ってくる何かを我慢するように頭が反っていたのだ。
「……ぃ、あ、ぃ、い、く、いくぅ」
「いいぞ、いけよ、見ててやっからいけよ」
「いく、いく、いく、あっ、いっ、ああ!」
淳吾に後ろから抱えられ、太ももを握られ、股を開いた状態で、ペニスに触れることなく白濁が飛び散った。咲太の体は噴出に合わせて、ひっくひっくと痙攣した。頭は知らぬ間に淳吾の首元に預けられ、淳吾の顔に唇を寄せていた。
余韻のような痙攣が収まると淳吾が咲太の頬にキスをした。
「可愛かったよ、サク、超出てたし」
「……ぃぁ、ん、もう……」
「じゃ今度は俺の番」
「……え……でも……」
「でもじゃない」
淳吾はそう言って咲太をくるっと回転させ、つながったまま自分の方へ向かせた。すると淳吾は咲太の太ももの下に両腕を入れ、そのまま立ち上がった。
「えっ、あっ、ああ、だ、め」
淳吾が動くたび咲太の奥に重い快感が届く。
咲太は淳吾の太い首に腕を回し自分から唇を重ねた。淳吾の腕に咲太の膝裏をひっかけた格好で淳吾は腰を振り出した。小さな子どもが抱っこされている格好に近く、下半身は淫棒と淫穴でつながっていた。
咲太の重みの分、淳吾の肉棒が容赦なく貫いてくる。その快楽に思わず唇が離れる。
「ああっあ、こんな、の、初め、てぇっ」
「だろ? 俺も。立ったままってやらしいよな。サクの感じてる顔、間近で見れて最高」
天井に届きそうな頭の中では、また昇天しそうな自分を感じていた。揺れる体から、ぱんぱんと鳴るお尻の頬から、淫猥な快楽が迸っているような気がした。
「ぁぁああ、俺、そろそろ、いっていい?」
淳吾の低く絞った声が目の前で聞こえた。
「ぃぃいい、いいよ、あっ、いって、いって」
「どこに出して欲しいか言えよ」
「……ぼ、僕の、な、中、中にぃ、あぃ」
「サクの中?」
「う、うんっ、うう」
「俺のザーメン欲しいか?」
「欲しいっ、ジュンのザーメン欲しい!」
「ぉよぉし、おお、いい、い、いく、いくぞ」
淳吾の雄叫びとともにキスをされ、お尻の奥では熱湯のような液体がずんずんと注がれているのが分かった。
淳吾の鼻息と連動している小刻みの痙攣が咲太の気持ちに愛しさを与えた。
「サク、好きだよ」
「僕も……」
お互い同時にキスを求め合った。次の瞬間、咲太を支えていた腕が頼りなくなり、腕を絡ませていた首が細くなっていった。目を開くとがっちりとした男がどんどん元の小柄の淳吾に戻ってしまった。
淳吾は苦しそうな顔を浮かべ、唸りながら咲太をなんとか布団に下ろそうとした。
「も、ジュン、離していいよもう」
「いや、最後までお前をエスコートする」
「無理しないで、もういいから」
「俺だって男なんだから、ぁああっ」
「ああ、ジュン、危ない!」
「うおっ!」
バランスを崩してしまい、二人して布団になだれ込むように倒れてしまった。栓を抜くようにペニスが抜かれ、どくどくと温かいものが出てきてしまった。
「ああ……」
「俺が拭くからサクはそのままで」
「ありがと……」
「やっべ興奮しすぎて本当の俺を忘れてたわ」
「いいよ、僕こそ、そうだったし……」
「ほんと? 俺で感じてくれた?」
「……うん……」
咲太がこくっと頷くと、淳吾は笑顔で咲太の頭を撫でた。
淳吾は真剣な顔になり咲太を見つめた。
「もう一回言う。俺はお前が好き。サクもさっき好きって言ってくれたよな?」
「うん……僕も好きだよ……」
「マジで信じるよ」
「うん」
「絶対に幸せにするし守るから、お前のこと」
「うん……」
淳吾は咲太の肩に腕を回して、優しく穏やかな口づけをしてきた。肩に回っている腕は決してたくましいわけじゃない。薄い手だけれどしっかり掴まれている力加減に気持ちの強さを感じた。求められる幸せが咲太の中に温かいものを生まれさせて、それが好きの感情になっていく。
淳吾が隣にいてくれることの有難みが今さらながらに胸の奥から膨れてきた。まるで、草原が一晩で雪景色に変身したみたいに、世界が変わって見えた。
抱かれている最中の淳吾じゃなくて、今目の前にいる淳吾を愛おしく感じている自分がいた。
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