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ある日、森の中⑪

 そんな場所に誰かに侵入されるのは、未体験の事で。  ぞわりと全身の毛が総毛立ち、嫌悪感から体が小刻みに震えた。 「もしかして、初めて?」  その反応を見て、驚いた様に聞かれた。  でもここでそうだと答えたところできっと、この男を調子付かせるだけに違いない。  ......それならば。 「は?......そんなワケ無いでしょ。  まさか僕に、処女性とか求めてるの?」  顔を後ろに向け、ニヤリと口角を上げ答えた。  それとは逆に不機嫌そうに歪む、課長の唇。 「んなもん、求めてねぇよ。  ......まぁ、いいや。  初めてじゃないなら、多少乱暴に使っても問題ないよな?」  使う、だと?......人の事、物扱いかよ。  コイツ、ホント最低な野郎だな。  でも、その方がいい。  さっきみたいに優しく、いつもみたいな口調で愛でられるよりは、無理矢理掘られる方が百万倍マシだ。  課長のゴツゴツした、骨張った指がゆっくりと、着実に僕の中に入り込んでくる。  その未知の感覚は恐怖でしかなかったけれど、感じる事も、悲鳴をあげる事も、もう泣く事すらもないまま、すべてを終わらせてやる。  僕は改めてそう心に誓い、半ばヤケクソでこの身を彼に投げ出した。 「......お前、分かり易過ぎ。  ま、いいけどね。  下手に暴れられるのも、面倒だし」  クククと背後で、笑う気配。  しかしゆっくり指を引き抜かれた瞬間、さっきまで感じていた異物感とは異なる感覚が僕の体を襲った。 「ぁ......んんっ......!!」  自然と漏れた、喘ぎ声。  慌てて口を手のひらで覆ったけれど、それをこの性悪男が見逃す筈もなく。 「あれあれ?久米くーん?  ......もしかして、感じちゃったの?」  背後から抱き締めたまま、耳元で囁くみたいにして聞かれた。  くっ......、屈辱!  しかし何と答えてもろくな事にならないと判断し、全力で無視した。  すると課長はクスクスと楽しそうに笑いながらローションを足し、再度指を突き入れてきて、さっき同様ゆっくり僕の中の反応を確認するみたいに角度を変えながら引き抜いた。  そしてそれを何度も繰り返しながら、僕のイイところを探り、一度でも感じた場所は執拗なまでに抉られ、擦られる。  絶対に反応なんて返したく無いのに、僕の意思に反し、いやらしく震える体。  堪えようとすればするほど。  ......感じないでおこうとすればするほどその与えられる刺激は明確なモノとなり、嫌でも知らしめられる彼の指の存在。  痛いだけなら、まだ良かった。  でもそうじゃなくて、こんなに感じさせられるとか。  ......ホントこの男、今すぐぶん殴りてぇっ!!

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