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ある日、森の中⑬
こわい!こわい!こわい!
再び溢れそうになる、涙。
恐怖に震える、体。
すると課長はちょっと困り顔で笑い、優しく僕の頭を撫でながら言った。
「......ホントお前は、強情だな。
初めてなのはもう、こっちだってわかってんだよ。
力、抜け。
そしたらちゃんと甘やかしてやるし、気持ちよくしてやるから」
やっぱこの人、何も分かってない。
こわいのは、痛そうだからとかじゃない。
......こんなの で感じさせられて、これまでの価値観だとか、関係性だとか、色んな物を壊されちゃいそうなのがこわいのに。
でも何度も撫でられ、甘い声で囁かれると、自然と全身の力が抜けていき。
......体の方はいつの間にか、完全に受け入れ体勢になっていた。
「イイ子だね、久米君。
ゆっくり入れるから、深呼吸して。
......そう、上手。
そのまま、リラックスしてて」
労うように頬にそっと、触れるだけのキスを落とされた。
先程の言葉通り無理矢理なんかじゃなく、まるでこれが和姦であるかのように優しく、緩やかに侵入してくる彼のモノ。
最初は痛みとか異物感しかなかった筈なのに、まるで宝物にでも触れるみたいに大切そうに触れられ、撫でられる内にそれは快感へと変化していった。
浅く荒い呼吸を繰り返しながら、課長の言葉に従い、快楽を追う。
こんな場所にこんなモノを入れられるのは初めてだというのに、与えられる熱と刺激はどうしようもない位心地よくて。
嫌で堪らない筈の行為なのに、もっとして欲しくて。
こんな風に僕の事を犯している男の事なんか、大嫌いだし憎くて堪らない筈なのに、ただ愛しくて。
でも僕は、何で嫌じゃないんだろう?
それこそさっき無理矢理口にくわえさせられた時だって、噛み付いて逃げる事だって、やろうと思えば出来た筈なのに。
何で僕はされるがまま、この男に抱かれてるんだろう?
そこでバカな僕も、ようやく気付いた。
あぁ、なんだ。そっか。
......僕はこの人の事が、好きなんだ。
実験に取り組んでいる時の、真面目な顔も。
ゆるゆるでフワフワの、年の割にあどけない、ちょっと可愛らしい感じの笑顔も。
どこか抜けているようでいて、ちゃんと僕らの事を見、そしていざって時はしっかり守ってくれる、格好いいところも。
......今日初めて知った、酔った時の意地悪で屈折した顔ですらも。
そんな風な事を、ぼんやりと蕩けきった頭の片隅で考えながら。
......僕は課長の動きに合わせるみたいにして卑猥に腰を振り、自ら求めるようにこの行為に溺れていった。
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