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ある日、森の中⑭
「久米君、気持ちい?」
優しく耳元で聞き、背後からそっと抱き締められると、いつもは天の邪鬼で悪態しか吐けない僕の唇から素直な言葉が溢 れ出た。
「ん......、気持ちい......。
課長、もっと......!」
そんな僕の声を聞き、クスリと耳のすぐ横で笑う彼。
耳にかかる息すらも、気持ちよくて。
この頃になるともう、悔しいとか、情けないとかも思わなくなってて。
何でノンケの課長が、僕の事を抱こうと思ったんだろう?
手近なところでいつでも使えそうな、性欲処理の道具みたいに見られてるんだろうか。
それともこの人も、僕の事が好きなのかな。
......だったら、いいのに。
でももうそんなの、どうでもいいか。
......気持ちいいし、僕がこの人の事を好きなんだから。
聞きたい事も、言いたい事も山程ある筈なのに、ただ淫らな喘ぎ声だけが漏れる。
そこからは考える事を放棄して、ただ与えられる刺激に溺れ、本能に従い求め、奪った。
「お前の中、ヤバ......。
出すぞ、久米君......!」
その言葉に、ただ何度も大きく頷いた。
僕を抱き締める力が、強くなる。
一段と激しくなる、律動。
僕の中で彼のモノが更に大きくなり、脈動するのを感じた。
気持ち良すぎて僕はもう動く事が出来ず、ただされるがまま彼に体を差し出し、喘ぎ続けて。
......そのまま二人、ほぼ同時に二度目の絶頂を迎えた。
***
そして訪れた、賢者タイム。
ちょっと気だるい気分で僕は苦虫を噛み潰したみたいな顔をして、抵抗する事無く抱き締められたまま吐き捨てるみたいに言った。
「......長いんですよ、課長。
もしかして、遅漏?
それとも年のせいで感覚、鈍くなってます?」
すると課長は課長でまたしても眉間に深いシワを寄せ、忌々しげに答えた。
「はぁっ!?
お前、ホント可愛くねぇな!
......さっきまではアンアン喘いで、悦んでた癖しやがって」
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