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サイアクな選択①~side田畑~
手を出すつもりなんか、微塵も無かった。
ただ確かめたかった、それだけだった。
これが愛だの恋だのなんていう面倒で厄介な感情なんかじゃなく、コイツはただの仕事仲間の一人なのだという事を。
でも確かめようと二人で飲みに行った結果は、俺の求めた答えとは真逆のモノで。
直属の、自分の部下だぞ?
一回り以上年下の、子供だぞ?
しかも男で、恋人持ちって......どう考えてもアウトだろ。
......デメリットと、リスクしかねぇ。
はぁ......、クソ!
......マジで、最悪なんだけど。
頭をガシガシと掻き、まだ隣でスヤスヤと健やかな吐息をたてて眠る久米君の顔を盗み見た。
「ハッ......寝てる時は、天使だな」
愛らしい寝姿を見て、不覚にもちょっとキュンとした。
......そんなキャラじゃねぇだろ、俺。
忌々しい気持ちで舌打ちをひとつして、彼の事を起こさないようそっと起き上がり、気持ちを落ち着かせる為煙草に火をつけた。
そもそもの話、久米君に素の自分を見せるつもりなど無かったのだ。
酔って意識のない彼をお持ち帰りした挙句、無理矢理とか。
......それも、二発。しかも、中出し。
久米君と関係を持っただなんて同じ部署の金田君にバレたら、間違いなくネチネチと嫌味を言われる事だろう。
もしかしたら、ぶん殴られるかも知れない。
その上この行為が無理矢理、合意もなきままに行われたモノだなんて知られた日には。
はは…...、俺殺されるかも。
......マジでデメリットと、リスクしかねぇ。
別に女に不自由している訳でもないし、運悪く夜の相手が見つからなくても、金を出して風俗でさっくり解消する事だって可能だった筈なのに。
......酒のせいとはいえ頬を染め、呂律が回らないままにっこりと笑うコイツの顔を見た瞬間、俺の中で何かがぶっ壊れた。
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