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好きって、言ってよ①
最近の僕は、傍目には分かりづらいかもしれないが、何気にご機嫌だったりする。
と言うのもずっと一夜限りの遊び相手として弄ばれただけだと思っていた課長がまた僕の事を、何かにつけ構ってくれるようになったからだ。
とは言え天の邪鬼で可愛げなんてモノは微塵も持ち合わせていない僕は、本当は嬉しいのに素直じゃない反応しか返せないけれど。
毎週末、嫌がり渋るフリをする 僕を無理矢理拉致り、彼は手料理を振る舞ってくれる。
そしてその後は、朝まで貪られ続けるのが最近の定番コース。
最初の頃はタチの僕が、なんでこんな目に遭わされねばならぬのかと、思っていたはずなのに。
最近は、後ろの良さなんてもんまで覚えさせられてしまった。
なのでたぶん今さら僕は、タチになんて戻れない。
それにどう考えてもあの人がネコ側に回り、僕に突っ込まれて喘ぐ姿なんて想像出来ないし、そんな風にさせたところで僕も彼も楽しめるとも思えない。
だからもう、いいのだ。
僕がこの日常が、幸せだって思えているんだから。
「久米君、今日うちに泊まりに来るよね?」
金曜日。
研究室に、二人きりになったタイミングで。
柔和な笑みを浮かべ、課長が耳元で囁いた。
だから僕もにっこりと微笑み返し、答えた。
「どうせ断ったところで、無理矢理強制的にお持ち帰りされちゃうんでしょ?
行ってあげてもいいですけど、少しは自重して下さいね」
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