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好きって、言ってよ②
あぁ、もう!
......なんでこんな可愛くない口の聞き方しか出来ないんだよ、僕は。
少し泣きたい気持ちになりながらも、この人を前にしたら、素直な受け答えが出来なくなってしまう。
これまでの恋愛ではそつなくちゃんと、相手の欲しがる言葉を与えてあげられていた筈なのに。
でも彼は可笑しそうにクスクスと笑い、ポンポンと僕の頭に軽く触れた。
それだけで少しだけ胸がきゅんってして、甘酸っぱい気持ちになる。
そんな僕の心の中を見透かしたみたいにクククと肩を揺らして笑う、素の彼の顔を見て。
...あまりにもムカついたから、思いっきり足を蹴っ飛ばしてやった。
***
就業時間が終わり、毎度の如くほんの少しだけ抵抗する素振りを見せ、それを軽くいなされて連れ込まれた彼の部屋。
いつの間にか用意されていた僕専用の着替えだったり、歯ブラシだったりのお泊まりセット。
それを見る度なんだかくすぐったい気分になり、ますます素直になれない僕。
これまで年下の男の子としか恋愛をした事が無かった僕は、どうやって自分よりもずっと大人な彼に気持ちを返したらいいか分からなくて、いつも途方に暮れてしまうのだ。
......が、しかし。
彼の用意してくれたオムライスを美味しく頂いた後、いつもの流れでひとりシャワーを浴びながら、気付いてしまった。
僕とした事が、彼にグズグズに身も心も融かされて脳内がお花畑化し、すっかり見落としてしまっていた。
あれ?......そう言えば僕、アイツに好きって、言われてなくない?
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