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好きって、言ってよ④

「なに、なに、久米君。  今日は、そういう趣向?」  目が見えていなくても、なおも余裕綽々といった感じでクスクスと笑う年上の男。  ......マシでコイツ、ムカつくんだけど。 「まぁ、そんなところです。  あまり動かない方が、いいですよ?  ......手首、鬱血でもしたら、痕が目立ちますからね。」  僕も笑いながら、彼の唇に指を這わせ、耳元で囁いた。 「えー......、どうしよっかな。  されるがままって、好きじゃねぇんだわ。  それに俺も久米君の事、可愛がってあげたいしねぇ」  楽しげに彼はそう言うと、器用に足を伸ばし、僕の股間を膝で軽く撫でた。 「んっ......!!」  予想外の反撃に、漏れた声。  それを聞き、満足げにニヤリと上がる彼の口角。  コイツ、余裕かまし過ぎ。  ......絶対に課長から、強請らせてやる!  こうして僕は、性懲りも無く彼に喧嘩をふっ掛けて。  ......この浅はかで考え無しな行動を、死ぬほど後悔する事になる。 *** 「可愛がって貰わなくても、結構です。  余計な事を考える余裕が無くなるくらい、気持ちよくしてあげますね」  感じ悪くにやけた唇に、指を突っ込んでやった。  するとその指先を、ねっとりと舌先でなぞられて......そのまま疑似的に、フェラの真似事みたい頭を揺らし、口から抜き差しされた。  舐められているのは指先だけだと言うのに、呼吸が自然と荒くなっていくのを感じる。  視界は塞いだ筈なのに、まるで見えているかのごとく、いやらしく蠢く彼の舌。  イニシアチブを取っていたのは僕な筈なのに、乱されるのは今日も僕ばかり。  ......それが悔しいし、ムカつく。

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