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好きって、言ってよ⑨
そして僕の中からぬるりと引き抜かれた、彼のモノ。
驚き横を向くと、視界の先で、ニヤリと彼の口元が意地悪く歪んだ。
「......あなたに飼われた覚えなんか、ありませんけどね」
はぁはぁと呼吸を乱しながらも、ついまたしても反抗的な態度をとってしまった。
彼の眉間に、深いシワが寄る。
これ以上この獣を挑発するべきではないと、頭ではわかってる。
わかってる......けど。
生まれつき、こういう性分なんだよ!!
「あぁ、なんだ。
課長ってば、まだ酔ってるんですね。
それとも年のせいで、記憶が曖昧になっちゃってるのかな?
......お前なんかに、飼われた覚えねぇよ。
まじでセクハラで訴えるぞ、このクソ上司!」
すると彼はにっこりと微笑み、ベッドの脇に落ちていた残りの結束バンドを手に取ると、僕に見せ付けるようにして目の前で揺らした。
***
「俺はお前と違って、手加減とかしねぇから」
ニヤニヤと楽しそうに笑いながら彼は僕の服をすべて脱がせ、右手首と右足首を少し強めにバンドを使って拘束した。
......更に左側も、同様に。
その結果僕はまるでカエルみたいな格好のまま、上向きに寝転がされている状態だ。
......本当にコイツ、悪趣味過ぎる。
内心激しく動揺しながらも、にっこり微笑んで答えた。
「そのようですね。
力加減とか、あなた出来ませんもんね。
もし痕とか残るような事があれば、後でぶん殴ります」
それを聞き、彼の口元がへの字形に歪んだ。
「やっぱりお前、可愛くなさ過ぎだわ。
わざと見えるところに思いっきり痕を残して、恥ずかしい目に遭わせてやろっか?」
可愛くない、か。
......確かに、その通りかもなと思う。
でも、仕方ないだろ?
......だってあなたは僕に、好きって言ってくれないんだもん。
モンブランよりも、エベレストよりも高いプライドが邪魔をしてそんな事、口には出来なかったけれど。
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