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好きって、言ってよ⑫

 ......は?何だよ、それ。  なんで僕の側に理由があるみたいに、言われなくちゃいけない訳?  疑問がまんま、顔に出てしまっていたのだろう。  課長は心底げんなりした感じで、死んだ魚のような目を僕に向けた。  そして、次の瞬間。  ......今度はピアスをしている方の耳を、思いっきり引っ張られた。 「イタ!何すんだよ、おま...」 「他の男とオソロのピアスを身に付けてるヤツなんぞに、一生言うわけねぇだろうが。  ......バーカ!!」  僕が最後まで言い切る前に、忌々しげに大声でそれだけ言うと、彼はべ、と舌を出した。  ......子供か! 「......意外と独占欲、強いんですね。」  ツンと顔をそらす彼を見て、つい吹き出した。 「そうだよ、悪いかよ?  独占欲強いし、その上嫉妬深いけど?」  机の引き出しからハサミを取り出し、手足を拘束していた結束バンドを切りながら、耳元で囁かれた。 「それは、僕も同じかもですけどね」  なおも笑いながら、自身の耳元に手をやり、金色のピアスをそっと外した。  そしてそれをぎゅっと握り締め、部屋の隅に置かれていたゴミ箱に勢いよく投げ入れた。 「ゴミの分別は、後であなたがしてくださいね」    驚く彼を尻目に、笑顔で告げた。 「あなたの事が好きだと、ちゃんと僕は言いましたよね?  もう、翼君には。  ......元カレには、未練も気持ちもないです。  単に外すタイミング、逃してただけですよ」  その言葉に、彼も笑顔に変わった。

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