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日曜日の朝は~side田畑~②

 ぐっ、と背後から抱き締め、耳朶や項に唇を添え、舌を這わせながら再度聞き返す。 「......泊まってく、よな?」  彼の呼吸は少しだけ甘いものに変わったのだけれど、すぐに俺の唇を避けるように起き上がり、にっこりと微笑んだ。 「無理って、言いましたよね?  年のせいで、耳が遠くなって来てるんですか?」  くっ、このツンデレ小悪魔めっ!  ......つーか少な過ぎるんだよ、デレが。 「......何で、無理なんだよ?」  不機嫌さが、顔と声に出る。  一回り以上年下の|子供《ガキ》相手に、自分でも何やってるんだとは思うけれど。 「泊まったらどうせまた、いい年して盛りのついた猫みたいにずーっとやりっ放しでしょ?  動けなくなるの、マジで困るんで」  あまりにも、酷い言われ様だ。  でも前科持ちだし、そこに関してはまぁ...うん、自覚ある。 「それに明日の朝は同じアパートの子と、一緒にテレビ観る予定なんですよ」  一転して今度はテレテレと、嬉しそうな笑顔。  でもこのデレは自分に向けられたもんではないと分かっているから、不愉快な気分が増す。 「......それって、男?女?」  久米君は一瞬キョトンとした感じで俺の顔を見下ろし、それからニタリと嫌な感じで笑った。 「男です。  うちのアパート、女人禁制なんで」  普通ならば、ホッとするところだろう。   だが、この男。  ......生粋の、ゲイなのだ。  余計、落ち着かなくなったじゃねぇかっ!   「ふーん......、そうなんだ」  でもなるべく感情を出さぬよう、抑揚の無い声で答えた。

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