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後始末
東城と一緒にいた隣の班の刑事が広瀬に近づいてきた。彼は、広瀬の腕を縛っていた結束バンドをはずしてくれた。
「あんなでかい声でたんだな」と妙なことを感心された。
広瀬は腕を前に回し、動かしていく。血が巡ってきてさらに痛みが増す。片手ずつ手首をこすって血流をよくしようとしたが、手が震えている。拘束されていたせいと、恐怖のせいだ。
東城は、佐々木の撃たれた足を止血している。
佐々木はまだ泣いていた。なんで俺を撃ったんだと何度も何度も言っていた。
しばらくして、外に複数のサイレンの音がしはじめた。応援と救急車が来たのだ。
広瀬は、黒沼の近くに行き、彼の手と足の結束バンドをはずした。片足は鉄パイプでやられ、おそらく骨が砕けているのだろう。黒沼は結束バンドをはずす動作すら痛そうだった。
黒沼は自由な手足になると浅井の方に顔を向けた。浅井はこの場で起こった出来事に呆然としている。「金のことはあきらめるんだな」と言った。さらに「やっぱりお前はトロい奴だったな」と嘲笑まじりに言った。
浅井が黒沼を見た。彼の手近にはまだ鉄パイプがあった。
浅井は跳ね上がるように立つと、黒沼に鉄パイプを振り上げて殴りかかってきた。
広瀬はとっさに黒沼を守ろうとした。
「バカ、よけろ!」と怒鳴り声がして、広瀬は黒沼と一緒に身体ごと突き飛ばされた。
東城が浅井の動作に気づいたのだ。
鉄パイプは勢いよく振り下ろされ、東城の頭と頭をかばおうとした左腕にあたった。相当な衝撃だったはずなのに、東城は倒れず、鉄パイプを右手でつかむと、浅井ごと横に振った。浅井には予期せぬ反抗だったので、吹き飛ばされ倒れる。東城は、鉄パイプを遠くに放り投げた。そして、浅井の上に馬乗りになり、彼の手を後ろにし、手錠をかけた。
東城の頭から血が流れていた。彼は右手で頭に触り自分で血がでているのを確かめている。
「大丈夫か?」と別な刑事に声をかけられうなずいていた。
広瀬は、黒沼と一緒に座り込んだままその光景を呆然と見ていた。
黒沼は何が面白いのか笑っていた。救急隊員がきて彼をつれていくまでずっと笑いやむことはなかった。
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