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後始末3

大井戸署では高田に注意されると思って覚悟していたが、高田は広瀬をみるなり、シャワーを浴びて着替えて来いと言い、その後も、食事をしながら状況を聞かれただけだった。 「いろいろ総合すると、お前がいなかったら佐々木は殺されてたかもしれないらしいから、悪いことばかりじゃなかったってことだな」と高田に感想を言われた。 そして、提出書類を書いていたら昼過ぎにになって、今日はもういいから帰れと言われたのだった。 帰り支度をしていると再度高田に呼ばれた。 「田島の件で東城がお前になにを言ったのか知らないが、広瀬、捜査の過程で捜査員の誰が何を知るのかというのは、お前たちが決めることじゃない。今回、田島を追う件を知っていたのはごくわずかだ。私と課長で采配したんだ。そして、結果的には、お前に田島のことを知らせなくてよかったと思っている。だから、この件は東城が決めたことでもなんでもないから、その点は誤解しないように」 「はい」と広瀬はかろうじて返事をした。だが、「どうしてですか?」思わず聞き返した。 高田は広瀬が自分に質問したのに驚いたようだった。 「サブシステムに田島の情報も入れればもっと早くにいろいろなことがわかったと思います」 高田はしばらく黙って考えていた。そして言った。「ああ、そうかもしれないな。次からはサブシステムを使うということも考えよう」そして、話は終わりだと言われた。 帰ろうとしたところで今度は君塚に呼び止められた。また、泣きそうな顔をしている。 「広瀬さん、あの、広瀬さんのタブレットですが」と君塚は言った。 広瀬はうなずいた。サブシステムは廃屋で落としたっきりだ。自分のスマホも。 「今、証拠品の中にあります。見つけたときは壊されてて。見ますか?」 ナイフの柄でタブレットの液晶が割られたのは見た。あの後、さらに壊されたのだろうか。 広瀬の個人のスマホも壊されていたと君塚に教えられた。 広瀬は君塚について証拠品が管理されているところに行った。 君塚が言ったとおり、タブレットは壊されていた。ビニール袋にいれられていたそれは、液晶がこなごなに割れ、後ろのカバーが強引に剥ぎ取られていた。さらに、水につけられたのだろう、濡れていた。 広瀬はビニール袋の上からタブレットに触れた。 壊れてしまった。自分が大事にしなかったからだ。もう、直すことはできない。 保存されていたデータは全て失われたのだ。時間をかけて作った地図も写真も。広瀬の記憶の一部だったはずなのに。記憶を失うということは自分も失われるということなのだろうか。地図を作ったり、写真をとったりしていた時の自分の一部は確実に消え去った。 これで、実験も終わりだ。サブシステムが使われることは二度とないのだ。 君塚が優しい声で隣から何かを言っていた。専門家に依頼したらデータの一部はリカバリーできないだろうか、と言ったようなことだ。だが、広瀬にはデータは戻るとは思えなかった。 広瀬は部屋をでた。今度こそ、家に帰ることにした。

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