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5ー1
学校帰りに突然声をかけられた。
「谷村君」
一瞬誰を呼んでるかわからなくて、振り向くのが遅れた。元の名字は#安原__やすはら__#だったから、谷村は茄治の家のものだ。
見たことある女子だった。名前は知らないけど、クラスメイト。
「家こっちなの?」
「あ、うん」
何の用事だろうと思った。
朝雨が降ってたから自転車で行けなくて、今日は歩きだった。今は止んでいるけど。
「目、きれいだね」
何を言われたのかわからなかった。俺の目がきれいとかはじめて言われたから。
「あ、何でもないの」
頬を赤く染める。女の子だなと思った。茄治もやっぱりこういう子がいいのかななんて考える。
「兄さん」
って声がして驚いた。家の近くだったから、ちょうど茄治も帰ってきた所だったのかもしれない。
「あ、私行くね」
と名前も知らない女子が帰っていった。
「誰?」
「クラスメイト。多分」
よく知らないけど。
「目きれいとか言われてなかった?」
茄治が俺の目を覗き込むように言った。驚いて言い訳みたいに言ってしまった。
「ただの勘違いだって」
「色目使ってんじゃない?」
「使うわけないだろ」
そもそも少し女子が苦手だった。
「眼鏡したら?」
とかそんな風に言われた。
「さっきの女子みたいに勘違いする馬鹿がいるから」
ひどい言い草だとは思ったけど、どうでもいい。
「茄治が言うなら」
その後一緒に眼鏡を買いに行った。
別に目は悪くなかったけど。
銀縁のオタクがするようなダサい眼鏡だったけど、それが一番安かった。
茄治が選んでくれた眼鏡だからそれにしたのに、つけたら
「似合わねえ」
とか言う。
わざと変なのを選んだのかもしれない。
女子に声かけられたいわけじゃないから別にいい。茄治以外誰も興味ないから、学校の奴にどう思われようとどうだって良かった。
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