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いつまで俺は茄治の側にいられるんだろう。高校を卒業したら家を出なきゃいけない。後一年足らずなんて、耐えられそうにない。
大学は行く気がなかったので、高3の途中からアルバイトを始めた。夕方から夜までレストランでの接客業。お金を貯めて自立しようと思ってた。
昼間はほぼできなくなったから、茄治は毎日のように夜迫ってくる。
寝不足が続いて、アルバイトもきつかった。でも、断るなんてしたくなかった。ただ俺の方がやりたいだけだったんだ。
ちょっとふらついて、階段を踏み外しそうになった時、茄治に腕を掴まれた。
「兄さん」
昼間はほとんどバイトで会えてなかったから、久しぶりに明るい時間に茄治を見た。
「そんなに稼いでどうするの?」
「家出たいから」
そもそも茄治の両親とはその約束だったはずだ。
「ここにいんのやなの?」
「違っ。部屋開けてやれるだろ」
「は? 別にいいけど」
「嘘」
「なんかふらついてるけど、大丈夫?」
「バイト行かなきゃ」
シフト入ってるし休めない。それに、茄治の側にいるのが最近つらい。
「ねえ、兄さん」
なんか頭がぐらぐらする。俺は茄治に腕を引かれながら意識を手放した。
目が覚めたら茄治のいつも使っているベッドの上だった。もしかして茄治が運んでくれた?
「バイト」
「電話ガンガン鳴ってたから言っといたよ。休むって」
茄治が出てくれたんだ。
「働き過ぎなんだよ」
「だって」
お金稼がないと。
「夜やってるせい?」
「違う」
そうじゃないんだ。
「あんま寝てないんじゃないの?」
「違うから、やめないで」
怖かった。もういらないって言われるのが。
「何それ。どんだけヤリマンなの」
違うんだ。ただ、茄治を手離したくない。
「ヤリマンって変か」
くだらないことで笑う茄治に、飽きられないように必死だった。
「寝ろよ」
「茄治」
「寝ろって」
唇に触れながら囁くように言う。
「寝ないと襲うからな」
さすがにそんな元気なくて、おとなしく寝た。
なんかいつもより茄治が優しくて、たまには倒れるのもいいかもとか思ってしまった。
茄治の匂いのするベッドの中で気付いたら眠っていた。
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