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 夜、いつものように迫られた時、反射的に俺の体がびくっと震えた。  茄治の手がすごく冷たくて、今までと別もののような気がした。 「やめろって」 「は?」 「眠いんだ。疲れてて」  そんな言い訳をした。ただ、茄治に触れられるのが怖かっただけなのに。   「兄さん、どうかしたの?」 「兄なんかと思ってないくせに」 「は?」  俺のこといらないくせに。 「何馬鹿なこと言ってんの?」  腕を掴まれた。 「触るな」  つい渾身の力で振り払ってしまった。茄治の方が力が強いのに。 「あっそ」  茄治はそれから俺に一切触れてこなくなった。  そんな目で俺を。水商売人の卑しい子供だという目で見ないでほしかった。  汚いものを見るような目で。  身分が違うのだと。生きる世界が違うと言っているようで。  茄治にだけは見られなくなかった。  茄治はいずれ結婚し、俺になど構わなくなるだろう。女と付き合っているのも知っている。  ただ好奇心で、気軽にできるから俺とやっただけなんだ。  だからもういいだろ。  俺はこれ以上耐えられない。茄治が他の誰かのものになるなんて見たくもないんだ。  茄治と目を合わすのが怖くて、バイトのない日は学校帰りに時間をつぶした。夕飯は一人で食べ、夜はさっさと寝た。  もちろん学校でも1年の教室には近づかない。放課後も茄治に捕まらないようにさっさと帰る。  顔を合わせなければ、欲情することもない。  どうしても我慢できなくなった時も、茄治の写真を使うのはやめたんだ。消されなかったから、まだスマホには残ってる。消すこともできなくて、ただ未練がましく残してあった。  高校を卒業する次の日に、家を出ると決めた。それまでこつこつ稼いでた。

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