20 / 54

11-1

 高校の間にアルバイト先でスカウトされたホストを始めた。母と同じことをしてしまう自分が嫌だったけど。  給料もいいし、気が紛れるから。  源氏名とか考えるの面倒で、そのまま桔梗にした。名前からして源氏名っぽいし。母親もそんな感じでつけたのかもしれない。  雑用は大変で、体力がいる仕事だったけど、学生時代よりはよっぽど楽だった。  いちいち学校のために早起きしなくていい。それに家族の分の朝食作りと洗濯までしてたから、朝は大変だった。  一人は自由だ。  不満なのは、茄治がいないことだけ。  自分から離れたのに、何考えてるんだろ。これ以上一緒にいて、離れられなくなるのが怖かった。  最後のセックスを思い出しておかずにしてたけど、だんだんそれだけじゃ気が済まなくなってきた。  欲が溢れて止まらなくて、行きずりの相手を探した。一ヶ月も過ぎると、指名も取れるようになって、お店の後誘われることも多かった。女もいたけど、興味ないから丁重にお断りした。  いつも来てくれるハヤトって奴に抱かれた。ただ性欲の解消のために。  何回かやったけど、途中で来なくなった。忙しくなったのかもしれない。  一夜限りの相手もいた。  ただ茄治がいなくなった隙間を埋めるために他でごまかした。  意味なんかなかったけど、もう茄治に会うことはない。あれ以上恋い焦がれることは多分ない。  わかんないけど、茄治以上の奴とかいるわけない。  多分セックスの相性が良かったんだ。好きとかそんなのは恐れ多くて言えやしない。住む世界が違うから。真っ当な奴を巻き込んだら駄目だから。  会いたいとか思っちゃ駄目なんだ。何度も写真を消そうと思った。なのに消せない。せめて思い出だけでもなくしたくない。  どうしようもなく。誰とやっても満たされることなんかないとわかってた。

ともだちにシェアしよう!