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12ー1

 茄治の家を出て半年以上が過ぎた。仕事は順調で、指名も多く入る。愛想よくしてればいいんだから、楽な仕事だ。  自分の顔が嫌いだった。女みたいで、母親を彷彿させて。でも、そのおかげで稼げるのもわかっていたんだ。 「桔梗」  同僚に呼ばれた。  「指名だよ。8番」  指名だって言われて行ってみた。  そこにいた顔を見て俺の呼吸が止まった。 「茄治」  危うくドリンクを落としそうになる。 「兄さん」  他の従業員や客が不審な顔をするから、茄治の隣に座るしかなかった。 「こんなとこで何やってんの?」  怒ってる? 茄治の顔がまともに見られなかった。  下を向くと、耳を舌でペロッとなめられた。 「ひゃっ」  声を出しそうになって慌てて口をおさえた。 「今出れる?」  と囁くように言われた。  久しぶりに見る茄治はやっぱりかっこよくて、駄目だってわかってるのに欲情してしまう。  アフターにして店を出た。 「兄さん、探したんだからね」 「何でわかった」 「そんなん調べりゃわかんだろ。これ」  茄治が見せびらかしたのは、スマホにある俺の写真で。 「こんなの。いつ」 「やってる時に。あんたよく意識失うだろ」  そんなの知らない。 「つうかあんた何してんの」  腕を捕まれた。 「俺から逃れられると思った?」  唇を奪われた。 「違っ」  離れなければ。捕まってしまう。 「どうせあんた普通のじゃ満足できないだろ」 「やめろ」  唇をかみ切られ、血が浮き出た。 「今日はとことん付き合ってもらうから」  ホテルに連れ込まれて、やられることはわかってた。

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