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12ー3

 終わりにしようと思ったのに。家から出たら大丈夫だと思った。  茄治から離れられるって。なのに、見つけられた。  俺はいらない子だから。茄治の側にはいられないんだ。  そうは思っても、体は正直で、何度も何度も茄治を求めた。  夜が明けるのがわからなくなるくらい、抱かれた。  高校生に朝帰りさせちゃったけど。 「また来るから」 「茄治」 「もう逃げんなよ」  逃げなきゃいけないのに。 「兄さんは俺のものなんだから」  また来ると言った茄治を振り払えない。  うれしかったから。  家に帰って、またシャワーを浴びて、今日の余韻に想いをはせた。  途中で我慢できなくなって、自分で抜いた。あれだけやったのに。  スマホに残してた写真を見てしまう。ついでに待ち受けにまでする女々しい自分。  新しい写真が欲しくなった。成長してた。背も高くなってた。顔付きも男らしく。  いつまで俺は茄治にとらわれたままなのか。  欲しいのはいつも茄治だけ。まだ期待してしまう自分は、どうしようもなく愚かだ。  高校が終わってから店に来て、制服姿のまま俺を待ってる。仕事終わるの遅いのに。  同僚に弟って説明したら、早く上がらせてくれた。 「待ってなくていいのに」 「見張ってないとね」  茄治は変なことを言う。 「兄さんはすぐ色目使うから」  そういう仕事なんだからしょうがないだろ。 「使ってない」  茄治だけ。 「眼鏡やめたの?」  だってホストだから、顔見せないと。 「目悪くないし」 「うちに置きっぱなしだったよ」  ほらと茄治は鞄から眼鏡を取り出す。俺にかけてきた。 「やっぱ似合わない」  って笑う。 「茄治?」 「どこ行くの?」 「飯食いに行こう」  食べ盛りなんだから腹減ってるだろ。 「兄さんちは?」 「無理だから。散らかってるし」 「ふーん」  家に連れてったら、帰したくなくなる。  やばいと思ったから。  一緒に飯を食いながら、そういえば二人で出かけたことなんてほとんどなかったと思い出した。恋人なわけじゃないし、ただの義理の兄弟だから。俺の名字は安原に戻ったし、今はもう何の関係もないけど。  茄治がずっと兄さんと呼び続けるから、おかしくなるのだ。 「なんかさあ、うちじゃないのって変じゃない?」  それには答えずに言う。 「茄治、今日は終電で帰れよ」 「何回もできないじゃん」 「高校生だろ」 「何それずるい」 「茄治」  じっと見つめる。ここは折れるわけにはいかない。 「そういう時だけ常識人だよね」  ホテルに休憩で入った。泊まる気なかったから。  結局終電過ぎちゃって、タクシー代を渡した。茄治は渋々受け取って帰ったけど。高校生を夜更かしさせたら駄目なのに。

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