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ハヤトが久しぶりに店に来た。
今日は茄治は来るんだろうか。鉢合わせたらやばいと思った。
「まだ店いたんだ」
他に行くとこないし、当たり前だ。
「この後どう?」
ハヤトに誘われた。もういらないんだ。代わりは終わったから。本物がいるから。
「悪いけど」
断ろうとしたら、茄治が店に入って来るのが見えた。
今日は遅かったんだなとか。塾とか行ってんのかなとかどうでもいいことを思った。
茄治が俺の元に近付いてきた。
「誰、それ?」
茄治の目からついそらしてしまう。
「何だこのガキ」
「兄さん」
「別に何もないから」
嘘をついた。
「ハヤト、とにかく無理だから」
ハヤトはじろじろと俺と茄治を交互に見てきた。
「弟?」
馬鹿にしたような顔で俺を見た。
ハヤトが俺の腕を掴もうとしたら、茄治がはたいた。
「兄さんに触れるな」
茄治はまだ俺を自分のものだとか思ってるのか。
「茄治」
「へえ」
ハヤトはなめめわすように俺を見た。
「兄弟でできてんの?」
「血つながってないし」
何言い訳してるんだと自分で思う。
「今日はやめとく」
ハヤトは俺から離れていったけど、茄治がすごい顔をしていた。
「何なのあいつ」
どうでもいいんだ。
「もしかして誘われた?」
「断ったから」
「今日はって言ってたけど」
「それは、その」
つい慌てた表情をしてしまい、隠しきれない。茄治には何でもわかってしまうのに。
「ふーん」
茄治は何も言わなかったけど、出ようって言われた。仕事中なのに。
早めに仕事を終わらせて店を出たら、茄治に聞かれた。
「俺が兄さんを探すまで何してたの?」
何もしていない。
「あの男とやった?」
答えられない。
「図星なんだ」
バレたらやばいと思ってたのに、ごまかすことなんてできなかった。
「茄治」
「俺以外の男に抱かれるなんてお仕置きが必要だね」
やっぱりホテルに行くのかと思った。
拒絶できないんだ。だって本当は俺も抱かれたいから。
「何でやったの?」
我慢できなかったから。
「兄さん」
茄治だと思ってやったんだ。
ちょっとだけ似てたから。でも、そんなことは言えない。
「ごめん」
「何で謝るの?」
激しく背中をはたかれて、足蹴にされて、罵られて、それでも茄治がいい。
痛みも全て快感に変わる。
めちゃくちゃになで回されて、しごかれて、かき回されて、出し入れされて、もうどうしようもなく気持ちいい。
やってるうちに意識を失ってしまった。気付いたら茄治はいなかった。
帰ったのだろうか。まだ終電の時間じゃなかったから。
心配だったけど、そもそも番号も知らない。聞いたことなかった。
つながってるのは、お互いの写真だけ。そう考えると笑える。
今の写真が欲しいなと思いながら、家に帰った。
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