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休みの日に店から連絡があった。
弟がつぶれてるって。
どういうことだと思って行ってみたら、茄治が店で酔いつぶれてた。こんな茄治を見たことなくて。
「茄治?」
隣の席に座ると、変なことを言い出した。
「勝手に出てくんじゃねえよ。あんたのせいで」
「おい、茄治大丈夫」
「あんた母親と同じだよ。残された方がどんな気持ちになるかも知らないで」
「茄治?」
「次出てったら、他の男とやったら殺すから」
何を言ってるんだと思った。もしかして妬いてるのかと。
「元はといえば茄治が」
「は?」
「嫌なんだよ。お前の両親も、汚いものを見るような目で俺を。そんな風にお前に見られるのだけはやだったんだ」
今まで言いたくても言えなかったことを言ってしまった。
「もういいだろ。本命がいるならそいつと結婚すればいい。俺に拘る理由なんかないはずだ」
茄治は見下したような目で俺を見た。
「何馬鹿なこと言ってんの?」
顔に触れてくる。
「あんたわかってないんだ。そのきれいな瞳だけで、男も女も惑わすって。生粋のたらしみたいで。あんたになびく奴を見る度、殺してやりたくなる」
茄治がおかしい。
「俺以外のものなんかに絶対渡さない」
キスをしてきた。
「兄さん。俺以外に触れさせんな。ずっと俺のもので。側にいて」
酔いが回ったのか、茄治はそのままテーブルに突っ伏して寝た。
何を言い出すんだと思った。そんなことを言う茄治はいつもと違う。
いつものように口悪く、罵ってくれればいいのに。
俺のことずっと見下していればいい。
だって無理だから。身分が違うから。そんなこと言わなくていいんだ。
俺が勝手に茄治に抱かれたかったんだから、それでいいんだよ。
酔っぱらって目が覚めない茄治を、タクシーで部屋に連れて行った。家に入れる気なんかなかったのに。これ以上離れられなくならないように蓋をしたのに。茄治が俺を好きかもとか、考えないようにしたのに。壊れるから。壊してしまうから。
何でそんなこと言うんだよ。
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