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ちょっとだけ寝て、五時くらいに目が覚めた。ベッドの横を見たらまだ茄治は寝ていた。
写真欲しかったけど、そんなことよりやらなきゃいけないことがある。
茄治は家に帰って学校に行かなきゃならないから、俺にできることをしようと思った。
朝ご飯と弁当を作った。高校からは弁当だったから、俺が家にいたときは二人分作ってたけど、久しぶりだった。
今はどうしているんだろう。
料理をしている途中で茄治が起きてきた。
「あ、おはよう」
「なんかそれ新妻みたいだし」
茄治はそう言って笑った。
「弁当作ったから」
「え、マジで?」
「朝ご飯も食べてって」
テーブルなんかないから、ちゃぶ台に朝食を用意し、向かい合って座った。
「やっぱ兄さんが作るのうまい」
そんなこと初めて言われたけど。
「いつもどうしてんの?」
「惣菜とか、菓子パンとか。昼はコンビニ」
あの高校、学食ないから不便なんだ。
「夕飯だけは母さん作るけど、たまに遅い時もあって」
アルバイトを始めてから茄治の家で夕飯は作れなくなった。
「兄さんの飯が食べたい」
「ええっ」
茄治はたたみかけるように言った。
「ここに住みたい」
「駄目」
茄治はとたん不満そうな顔をする。
「高校生だろ」
「そればっか」
とにかく話題を変えないとと思った。
「家帰らなくて大丈夫?」
「え、あ。そういえば」
茄治は鞄からスマホを取り出した。
「スマホ電源切ってた」
茄治は電源を入れて顔をしかめた。
「心配されてるんじゃないの?」
「大丈夫」
絶対親とかから連絡入ってるはずなのに。
「そういえば兄さんの番号知らない」
「え?」
「教えて」
「え、あ、う」
「何、やなの?」
そういうわけじゃないけど、スマホを見られたら色々と問題が……。
「貸して」
「ちょっ、待っ」
やばい。待ち受けにしてたのが見つかってしまう。
「これ、まだ持ってたの?」
だいぶ前に一回撮った茄治の写真だ。
「他にないから」
「新しいの欲しい? つうか俺にもちょうだいよ」
「え、俺のなんか持っててもさ」
「何言ってんの?」
その場でばしゃって撮られた。そんなの不意打ちだ。
「い、今の消せ」
「何で?」
「変な顔してた」
「してないよ」
やめてほしい。心臓に悪い。
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