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「だって兄さんすごい我慢してるんだもん」
そうだったっけ?
「そんなに俺とやりたかったの?」
「うるさい」
からかわれると恥ずかしい。
茄治はやっぱりケラケラ笑う。
「でも、その後女とやってもちっとも気持ち良くなかった」
やっぱり女とやってたんだ。
「ずるい」
俺が他の男とやったら怒ったくせに。
「そんな顔しないでよ」
そんな顔ってどんな顔?
「ほんとに最初のちょっとだけだって」
茄治は優しく俺のアタマを撫でた。
「三目ぼれっていうの? その方が信憑性あるでしょ」
何言ってんだよと思う。
「何やってもうれしそうだから、ちょっと暴走したけど」
別にそれでも良かった。
「でも、本当に俺の気持ち気付いてなかった?」
正直に答えた。
「知ってた」
「はあ?」
「気付かない振りしたんだ。怖かったから」
「兄さん」
茄治はキスをして、ささやくように言う。
「もう恐くない?」
「茄治」
「逃げないでよ」
風呂で狭いのに向き合って、抱きしめ合ったりしてたらもうやばくて。
ずっとたちっぱなしのそこがうずいてくる。
「もう離さない」
風呂でもやって、出てからもやって、終電で家に帰した。
もちろん茄治は泊まりたがっていたけど、無理矢理帰す。
曲がりなりにも元兄さんだから、ちゃんとしないと、ね。
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